2022年新入社員の指導ポイント~2021年の新入社員の傾向から~

2022年03月02日

2022年度の新入社員の受け入れまで残すところ約1ヶ月。
コロナ禍であっても、新入社員の受け入れは待ったなし。
4月の受け入れ準備だけでなく、年間を通じた新入社員の研修スケジュールを計画に苦労されている企業様も多いのではないでしょうか?
また2021年に入社した社員も、OJTトレーニング期間から一社員として成長し、春からは先輩社員として見られる時期かと思います。

しかしながら、テレワークの導入や時差通勤などコロナ禍の1年において、新入社員研修が思うように進まない、新入社員の離職率に頭を抱えるなどの、状況に置かれている企業様も多いのではないでしょうか?

今回は、弊社が2021年4月に実施した新入社員研修を通じて、

  • 「指導した講師」からの客観的な傾向
  • 「受講した新入社員」からの主観的な仕事観

を合わせてみることで、1年前の新入社員の傾向を紐解き、これから迎え入れる2022年度の新入社員の傾向を推察していきたいと思います。

■2021年度新入社員の傾向とは?~講師が感じた今年の新入社員の傾向~

2021年も、ベテランの講師陣がクラスを受け持ち、座学だけではなく、グループワークやレポート提出など、新入社員一人一人の様子を確認しながら研修を終えました。

そのうち、一般コースにご参加いただいた255人の受講の様子を、昨年の「素直さ」「積極性」「規律性」「主体性」「協調性」「理解力・実践力」「関係構築力」の7つの観点で5点満点で評価しました。
同様の評価を行った2018年、2019年度の数値と研修中の様子を照らし合わせながら、「今年の新入社員の傾向」を分析しています。
(※2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の状況により新入社員研修の開催が中止)

上のグラフを見ると、これまでと比較して、「素直さ」「積極性」「規律性」「協調性」「理解力・実践力」という5つの項目でこれまでで一番高い数字となった反面、「主体性」「関係構築力」の2項目については明らかに一番低い数字となったことがわかります。

■決められたコミュニティーの中では協調性が発揮される新入社員

2018年、2019年の新入社員と大きく傾向に変化が見られたことの要因は、2020年からのコロナ禍が大きく影響していると考えられます。

感染症対策のため、マスクを着用していることで個々の表情がわかりにくいことや感染防止の観点から座席同士の距離がこれまでよりも離れているなど、コロナ前と比べて新入社員研修とはコミュニケーションがとりにくい環境でスタートした2021年の新入社員研修でした。
そのため、全体の雰囲気としては、これまでに比べても緊張感が高く、表情も乏しい印象が目立っていたように感じられました。

また、休憩時間のように誰とでも話せる時間でも、同じ会社の受講者同士で交流をし、隣の席や前後の席に座っている他社の受講者との交流の場面はあまり見られませんでした。

また研修中に隣の席や決められたグループで実施するワークへの取り組み方や声掛けの様子などからも、自発的に関係を構築したり、積極的にコミュニケーションを取る姿があまり見られず、「主体性」と「関係構築力」が顕著に低下していると感じられました。

これは、コロナ禍の影響により

  • 授業のオンライン化による自宅で一人で学習する時間の増加
  • 自ら行動する機会の制限
  • 友人との交流の場の喪失

など、初めて会った人とコミュニケーションをとる機会がなかったためと考えられます。

ただ一方で、研修の中では真面目で真摯に取り組む姿が多く見られました。
講師が指示したペアやグループが形成されると、他社から参加している受講者同士であってもそれぞれ「協調性」を発揮して課題に取り組む姿勢が見られました。
時間の経過とともに、緊張もほぐれ、発言も増え、個人差はあるものの「積極性」についても評価できる部分が多く、全体的にも微増ながらも高くなっています。

このようなことから、自発的に新しいコミュニケーションを生んだり、グループを作ったりすることは苦手でも、決められたペアやグループなどがあれば、協調性をもって、まじめに取り組むことができる傾向が見えてきます。

■「間違うことは恥ずかしい」協調性が裏目にでる新入社員

気になる点としては、2019年の研修と同様に講師に対する質問について、全体で共有することへの抵抗が見られました。

  • 講義中に質問を促しても挙手しない
  • 挙手を促すと視線を落とすなど、避けようとする
  • 人前で質問しない(休憩時間に講師に直接、尋ねにくる)

また、意見を発表する場面においても積極的に挙手をする人は決まっており、全体では非常に少ない割合となってました。

これはここ数年の新入社員に見られる顕著な特徴です。
つまり、多数がいる中で質問が出ないことが「全員が理解できている」「質問がない」ということではないということです。

■「素直さ」が非常に高い最近の新入社員

実は、同様の評価を、製造業向けの新入社員研修を受講した173名を対象に実施しています。
​製造業という業界特性上、同じ新入社員であっても最終学歴や年齢にばらつきがあることから、画一的な評価は難しい面もありますが、一般向けの研修を受講した受講生とおおむね同じようなレーダーチャート型となっていました。

その中でも、一般向け、製造向けともに「素直さ」の項目はほかの評価項目に対して非常に高い評価となっています。

これは指示があったことや、注意されたことには真摯に取り組む傾向があるものの、その反面、前述の「間違えることが恥ずかしい」「失敗したくない」という性質からか、指示があるまでは受動的な傾向が強く、指示以上のことや指示を先読みしたような行動をとるのは難しいように見受けられました。

■「高い理解度、弱い実践力」コロナ禍の影響を大きく受ける新入社員

また「理解力・実践力」においては、これまででは一番高い値を示していますが、「理解度は高くてもすぐに行動に移せない」という様子が散見しており、アウトプットとしての実践力を養うことが必要であると感じられました。

これはコロナ禍で進んだ授業カリキュラムの中で、「教養や情報を身につけること」はオンラインでも可能であったものが、比較的一方通行になりがちで、発言などの機会が少なかったためだと推察されます。

またオンライン上で、画面を通して発言する機会があっても、実際に対面するとうまく発言することができなかったり、チャットなどテキストの発言で、短時間で簡単なコメントを発するだけにとどまるため、単語として表現することはできても、文章として考えをまとめることが不得意な傾向が見られました。

ことから自分が頭で考えていることを言語化して発信する力を養う機会を研修などで取り入れることが重要だと感じられました。

■2021新入社員自身が抱く「仕事観」からみる理想の職場

さてこれまで、講師が新入社員の様子を客観的に分析した結果から「2021年の新入社員」を客観的に見てきましたが
ここから、新入社員自身に聞いた「仕事観」を参考に、深掘りしていきたいと思います。

2021年新入社員研修に参加した一般コース、製造業コース、オンライン型の受講生449人を対象に、就職活動や仕事観に対する意識調査を実施しました。
その結果のうち、特に新入社員全般の傾向がうかがえる項目について紹介します。
(回答依頼数449人うち有効回答数436人)

■相談しやすい環境の中でプライベートを大切にしたい新入社員

働き方や職場環境に関して「二つの意見のうち、どちらが自分の意見に近いか」という質問を行いました。
いくつか顕著な結果が出たものをピックアップして紹介します。

まず、職場環境や人間関係について調査をした結果からご紹介します。

ここから、引っ張ってくれるリーダーよりも相談しやすく人間関係を重視する上司が圧倒的に支持されています。

つまり、「サーバント・リーダーシップ」が上司に求められていることが明らかです。

また、職場の雰囲気に関しては「職場コミュニケーションを密で一体感のある職場」を求める一方で「プライベートの時間が持てる」ことも支持されています。

これらは若年層を指導するにあたり、注視すべきポイントです。

■決められたことをコツコツと、堅実なワークスタイル

次に紹介するのは仕事に対する姿勢です。
ここでは経過年での変化があまりなかったため、2021年度の結果のみご紹介します。

それぞれの2択の設問で以下が比較的多数を占めている結果となりました。

  • 給料が増えなくても良いから残業が少ない方が良い
  • なるべく出世せず、好きな仕事をしていきたい
  • 転勤や海外勤務は望まない
  • 決められた業務をコツコツとこなし貢献していきたい

これは前述の新入社員の傾向を裏付ける結果となりました。

ともすれば「向上心が足りない」と批判的な見方をされるかもしれませんが、目の前にある仕事をきちんと着実にこなし、こつこつ一歩一歩前進していける粘り強さにもつながると感じられます。

■新入社員の離職を防ぐ ~今後の指導育成のポイント~

これまでの内容を踏まえて、今後の指導育成に関して5つのポイントに分けて紹介します。

1.失敗よりも成功を積み重ねさせる工夫

ここまで2021年新入社員の傾向と意識についてお伝えをしてきました。
これらを踏まえ、今後どのような指導・育成が求められるか、解説をしていきます。

まず、指導にあたる場合、最初に仕事の目的や業務の重要性の根拠などを伝えることをお勧めします。
そのうえで、明確な指示→進捗確認→軌道修正→再度実行というPDCAサイクルを短く回すことが効果的です。

新入社員を含む若年層は失敗体験を重ねるよりも、成功体験を積んでモチベーションを上げることで伸びる傾向があり、前述のとおり「失敗をすることを恐れる」傾向があります。
そこで短くPDCAサイクルを回し、失敗になる前に軌道修正を行い、小さく成功体験を積み重ねることで「自分にもできる」と思えることが、新入社員の自己効力感を高めることができ、仕事の達成感や面白さへの気付きにつながります。

2.「とりあえずやってみて」は時代錯誤 大事なのはゴールを事前に共有すること

また、新入社員を含む若年層世代はスマートフォンなどの普及から、事前に調べてから行動したいと考える傾向があります。
つまり何事にも「予習」をする文化が根付いています。
したがって、仕事を任せる際には、事前の説明に比重をおき「ゴールイメージの共有」「この業務が誰のためのものか」「どのように自分が貢献できるか」というイメージの共有が重要です。

指導する側の準備ができてないと「とりあえずやってみて」となりがちですが、これは歓迎されません。
予習文化を好む新入社員にとっては不安を増幅させることになるだけでなく、「自分たちが大切にされていない」という気持ちを抱かせる大きなきっかけとなります。
「自分たちを大切にしてくれる会社」という期待を「裏切られた」と感じさせることにつながりかねません。

3.若年層に合わせた指導コンテンツの拡充

また、講義中に講師が話をして説明する場面以上に、動画を視聴している場面のほうが熱心に見入っている様子が見られました。
これは、コロナ禍の影響から一気に増加したオンラインでの学習や動画サイトの普及による影響があると考えます。
したがって、指導の場面において口頭説明やマニュアル配布だけでなく、視覚、聴覚からのインプットを意識した教材を用いることをおすすめします。

4.メンター制度の導入

さらに新入社員への定期的なヒアリング、フォロー体制を準備することが非常に重要です。
実際の職場に配属されてからのOJT指導の場面でつまづいたときに、相談できる相手が必要です。
そこで、新入社員の精神的なサポートをするためにも、なかなか引き出せない本音を言える環境提供として、メンター制度導入の検討を推奨します。

聞きたいことや言いたいことがあっても、なかなか自発的に声を挙げられない傾向がある新入社員に対して、積極的に声をかけ寄り添ってあげられるメンター制度の導入は非常に有効です。

5.継続的な新入社員の育成カリキュラムの組み立てと並行したトレーナーの育成

そして最後に、非常に大切なのは年間を通じた指導カリキュラムの作成です。
1年をかけて継続的に研修を受講することで、次年度からは先輩社員として後輩を指導していく道筋が本人たちにも見えてきます。

そして、OJTトレーナーやメンターとして選定された先輩社員は、今回のコラムでご紹介したような知識を持って指導に当たっていただくことが非常に重要です。

先輩社員としてこれらに任命されるのは、仕事で成果をあげている社員が多いのではないでしょうか? 
しかし、優秀な社員がトレーナーに向いているとは一概には言えません。

新入社員を育てるためには、時にはあたたかく見守ったり、新入社員と同じ目線に立って考えるなど、「教えるためのスキル」が必要なのです。
これらを踏まえて、先輩社員にも指導するスキルを身につける研修の提供が不可欠です

■新入社員の可能性や強みに光をあてる

コロナ禍となってはや2年。コロナ禍で受けた影響は、誰も無かったことにはできません。

いつ終わるか分からず、余儀なく制限された学生生活、就職活動を経て、やっと社会にでる2022年4月入社の新入社員の方々にとって、今回のアンケートを実施した受講生たちは「ともにコロナ禍で就職活動をした貴重な先輩社員」です。

不安な気持ちを抱えて入社してくる新入社員には、その1つ上の先輩は暖かい光をあてる存在となり得ます。

この不透明な時代に社会に出た新入社員の可能性や強みを引き出しながら、共に成長していただきたいと思います。

ぜひ、今回の調査結果を新入社員の育成だけでなく指導する立場の社員育成にもお役立ていただき、今後の貴社の人材育成や育成体制の検討にご活用ください。

■コラムに関連したおススメの公開セミナー

キャリアプランニングでは、OJTトレーナー養成研修シリーズのほかに新入社員を対象とした6月にはスタータップ研修、9月にはフォローアップ研修、新入社員向けの報連相研修などを実施予定です。

OJTトレーナー養成研修シリーズ

新入社員研修フォローアップ研修シリーズ