アドラー心理学に学ぶ、新入社員・若手社員の育成及び離職防止のポイントとは?

2018年11月13日

人材採用難と定着

超少子化高齢化社会、労働生産人口の減少に伴い、有効求人倍率は高止まりを続けており、人材の採用活動は年々厳しさを増しています。
厚生労働省の一般職業紹介状況(※1)からも売り手市場の状況が続いており、転職を考えるハードルは下がっています。

また当社が2018年4月に開催した新入社員研修の参加者を対象としたアンケートでも、「良い条件等の会社があれば将来転職を考える」と回答した層が、4月の入社時点で全体の約42%存在しています。
(※1)厚生労働省の一般職業紹介状況(平成30年6月分)
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000212893_00002.html

加えて、公的機関や民間会社の調査結果によると、2019年卒の大卒者の有効求人倍率の平均1.8倍に対して、中小企業では9.9倍超、大卒新卒者の3年以内離職率の平均32%に対して、中小企業は46%という結果となっています。
企業間格差も年々拡大している傾向にあり、特に中小企業にとって、人材の採用と定着は大きな課題となっています。

企業にとって、コストと時間をかけて採用した人材が退職することは様々な損失につながります。
一昔前であれば、「退職したら、新たな人材を採用すれば良い」という考えの企業も少なからずあったように思いますが、今は「退職しても、なかなか人材が採用できない」といった環境であり、採用した人材の育成と定着は、企業経営にとって、最優先課題の一つとなっているのです。

今回は、そうした人材の定着や育成のための視点やマネジメントの在り方、コミュニケーション面について、アルフレッド・アドラーが創始した「アドラー心理学」から参考となる考えをお伝えしたいと思います。

アドラー心理学

アルフレッド・アドラー(1870~1937年)はオーストリア出身の心理学者であり、個人心理学(アドラー心理学)を創始した人物として知られており、同時期に活躍したフロイト(1856~1939年)やユング(1875~1961年)とともに「心理学の三大巨頭」と呼ばれています。
日本では、2013年に刊行された、アドラー心理学について解説した書籍『嫌われる勇気』(※岸見一郎、古賀史健著、ダイヤモンド社)がベストセラーになったことや、ドラマ化されたこともあり、ご存知の方も多くいらっしゃると思います。

アドラー心理学の代表的な特徴として、次のことがあげられます。

  • 「人の行動は過去の経験や育った環境ではなく、その未来となる『目的』によって、決定されるとし、適切な目的を見つけることで新たな行動が決められる」
  • 「人間の悩みのすべては対人関係の悩み」
  • 「人は自身のライフパターンを変えることで、幸せになれる」

アドラー心理学を参考にした育成と離職防止のポイントをリスト化してみると以下のように整理できます。

アドラー心理学に基づく育成と離職防止のポイント
在り方 目的や価値観
人は過去の「原因」によって突き動かされるのではなく、いまの「目的」に沿って生きている。
人生(生き方)とはいつでも選択可能なものであり、過去にどんなつらいことがあったとしても、これからどう生きるかには関係がない。
【育成や離職防止のポイント】
・目的を伝え、理解させる。
・組織としての価値観をはっきりと伝える。
・経営理念やビジョンを具体的に説明する。
・他者との比較ではなく、自分の在りたい姿と比較させる。
・在りたい姿を実現するためには、どのようにするのかということを考えさせる。
課題の分離 自身の課題なのか、他人や組織の課題なのか
・相手の課題と自分の課題を分けなければならない。
・相手の課題に対して、必要以上に気にする必要はない。
【育成や離職防止のポイント】
・他人は変えることはできないが、自分は変わることができるという考えに基づき、他者と自分の課題を分け、取り組むべき課題に集中させる。
ライフスタイル
考えや行動の癖
・持って生まれた性格を変えようと思っても難しいが、考えや行動の癖を変えることはそこまで難しくはない。
【育成や離職防止のポイント】
・考えや行動の振り返りの機会を持つ。
・組織の行動指針と具体的な行動を照らし合わせて、アドバイスを行う。
共同体感覚 在り方の共有
・私たちは一人では生きてはいけないので、私たちが全体の一部であると感じる感覚が必要である。
・全体の一部である私たちは、周りの仲間を感じて関心を持つことがとても大切である。
【育成や離職防止のポイント】
・相手や周囲・チームを意識させる。
・他者や顧客に対する貢献度でも評価する。
・共同体感覚を抱くことは、幸せを感じることにも繋がることを理解させる。
次に、ポイントである「在り方」にフォーカスして具体例を少しあげてみます。

例えば、新入社員や若手社員に、仕事のレクチャーを行う場合、単にやり方や手順だけを伝える方法と、その仕事の本来の意義や目的も合わせて伝える方法を比較した場合、仕事に対する理解度をはじめ、その仕事に取り組む姿勢、成果にも差が出てきます。
後者の方が効果的であることは言うに及びません。
また、経営理念やビジョンを掲げている企業も多いと思います。

その理念やビジョンを社員に浸透させるため、 単に暗唱だけさせている企業と、かたや、理念やビジョンの実現を目指し、「どういったことに取り組むのか?」 「その取り組みを達成させるために、社員にはどういった行動や知識を求めるのか?」といったことを明確にし共通認識としている企業では、個人レベルの目的や価値観の醸成、仕事に取り組む意識にも大きな差が出てきます。
イソップ童話で有名な「3人のレンガ積み職人」でも、同じ仕事をしていても目的意識により、モチベーションに大きく左右されること、すなわち、目的意識を持つことの大切さを伝えています。
組織や仕事の目的や価値観、意義、目標を伝えることは、その組織で働く従業員の目的や価値観にもつながる 非常に重要なことなのです。

あきらめずに継続的な取り組みを

以上、アドラー心理学を参考に、簡単な事例をご紹介させていただきました。

その他、人材の育成や定着に 関して、参考となる考えが数多くあります。
成長した人材が組織に定着するということは、一朝一夕に実現できることではありません。
また、すぐに効果が現れる特効薬のようなものも存在しません。

組織の課題を洗い出し、その解決に向けて一つ一つ粘り強く取り組んでいくことが、人材の成長と定着に結びつき、ひいては組織の持続的成長の源泉になっていくのです。

すぐに効果が現れないからと言って、取り組みをやめることなく、粘り強く取り組んでいくことが大切だと考えます。

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