人材開発コラム COLUMN
~幸せな人生を実現する~セルフマネジメント
2024年07月24日
突然ですが、みなさんは「セルフマネジメント」という言葉をご存じでしょうか?
セルフマネジメントとは、周囲の環境や物事に左右されずに自分をしっかりと管理し、理想の目標に向かって進んでいくことを指します。
つまり、セルフマネジメント力を鍛えることは、より健康的でより良い人生を送るための近道と言えます。
セルフマネジメントは下記の5つの要素から構成されています。
・メンタルヘルスケア:心の健康を保つこと
・レジリエンス:逆境力、困難な状況下でも精神的に大きく落ち込むことなく適応し成長する能力
・マインドフルネス:今その瞬間に自分が体験している出来事を、ありのまま受け入れる心の持ちよう
・アンガーマネジメント:衝動的におとずれる怒りを分析し、うまくコントロールする能力
・キャリアデザイン:仕事に限らず、個々がより広い視野で働き方や人生について考えること
今回のコラムでは、このうち最も代表的な「メンタルヘルスケア」に深くかかわる「ストレスコントロール」の重要性やその具体的な手法を紹介します。
そしてこれらを理解し、身につけることは、仕事の面だけでなく、理想の未来を拓く、セルフマネジメント力の醸成につながることをわかりやすくご紹介していきます。
■ 深刻なストレス社会の日本
日本は世界有数のストレス大国と言われています。
コロナ禍を経た現在、我が国のストレス社会問題は益々深刻化しています。
健康不安が普遍化した上、リモートワークの増加により、仕事とプライベートの境界が曖昧になり、仕事のストレスが家庭生活に持ち込まれやすくなりました。
加えて、デジタルの進化により、常に情報にアクセスできる環境が、仕事やソーシャルメディアからの切り離しを困難にし、ストレスを引き起こす要因になっています。
厚生労働省が今年発表した調査によると、昨年、2023年度に「仕事上の強いストレスが原因でうつ病などの精神障害となった」として労災認定された方は883人となっています。
下のグラフで見ても明らかなように、過去5年で申請者数、認定者数ともに過去最多となっています。
■ ストレス社会を乗り越えるには「組織」と「個人」、両方の取り組みが必須!
このような深刻な状況を受け、厚生労働省は「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」を発表しています。
これは国、事業者(組織)、労働者(個人)が一体となって総合的かつ計画的に労働者の安全と健康を守り、労働災害防止対策に取り組むことができるよう策定されたものです。
その中に、具体的に実施すべき主な取組みの一つとして「4つのメンタルヘルスケア」が示されています。
・セルフケア:労働者自身が自分のストレスに気づき、予防や対処を行うケア
・ラインによるケア:管理監督者が職場環境の改善や部下の相談対応を行うケア
・事業場内産業保健スタッフ等によるケア:企業内の産業医や保健師、人事労務管理スタッフが行うケア
・事業場外資源によるケア:会社外の専門機関や専門家を活用し、その支援を受けるケア
上記からもわかるように、ストレスコントロールのためには、組織だけでなく、個々人も積極的に対策を推進し、安全衛生水準の向上に努めることが求められています。
実態に応じて上記の4つのケアを組み合わせ、継続的かつ計画的に行うことで、労働者の心の健康を総合的に守ることができます。
国としても、特にその推進に力を入れているのが「セルフケア」で、厚生労働省でも「セルフケア・セルフメディケーション推進室」を設置し、普及を促進しています。
この「セルフケア」とは個人が自分の健康を管理し、病気の予防や健康の維持・増進を図るための取組みです。
次でこの「セルフケア」について詳しく見ていきましょう。
■ セルフケアとストレスコントロール
メンタルヘルスにおけるセルフケアのはじめの一歩は、自身がストレスの原因に気づくことです。
自身のストレス原因に気づき、その対処方法を身につけることで身体的、精神的な健康を保つことができます。
つまり「セルフケアによってストレスコントロールができている状態」となります。
このようなストレスコントロールが日常的に実施できるような知識を身につけて、常に自身を良い状態に保つことができるのが理想です。
セルフケアの重要性を認識し、適切なストレスコントロールの方法を身につけることで、自身の日々の生活と仕事での成功や満足度を高めることが可能です。
また、ストレスコントロールは個人の健康とパフォーマンスへの影響だけではありません。
当然、その個人が属する職場においてチーム全体のパフォーマンスや組織の健全性にも大きく影響します。
では、具体的にストレスコントロールの方法をみていきましょう。
■ ストレスコントロールを身につける
自分自身を労り、癒し、心の余裕が生まれることで、周囲とのよりよい関係構築にもつながります。これから紹介するストレスコントロールの方法を、ぜひ日常的に実践してみてください。
1.「ストレスをためない3つの思考法」を身につける
メンタルヘルスにおけるセルフケアのはじめの一歩は、自身がストレスの原因に気づくことをお伝えしました。
多くのストレスに囲まれている現代社会において、自身の力ではどうしても変えられない要因も多くあると思います。
そのような要因にも柔軟に対応するためには、自身の思考のクセを見直してみませんか?
具体的に、以下の3つの思考方法をおすすめしたいと思います。
- 事態を客観的に捉える思考法
問題や困難に直面した際につい感情的になっていませんか?
事態を客観的に捉えることで感情的な反応を抑え、客観的に事実を確認するクセをつけましょう。
感情的な判断を避けることでストレスを軽減する第一歩となります。 - 自分にできること・できないことを明確にする思考法
自身を客観的に評価できていますか?オーバーワークになっていませんか?
過度な責任感や自己評価の低さがストレスの原因となることがあります。
自分にできることと、できないことを明確にし、自分の限界を認めることで無理な負担をかけないようにしましょう。 - ポジティブな視点で事態を捉える思考法
苦手なこと、やりたくないことに否定的な態度で臨んでいませんか?
ネガティブな出来事や状況に対しては、困難を乗り越えるための学びや成長の機会と捉えましょう。
視点を変えてみることで、ストレスを軽減することができる可能性が高まります。
2.ストレスに意識的に対処する力を身につける
ストレスコーピングという言葉を聞いたことがありますか?コーピングとは、「cope:うまく対処する」という意味を持つ英語から派生した造語で、ストレスに対処するための意識的な行動を「ストレスコーピング」といいます。
このストレスコーピングを実践することで、ストレスがかかる環境や状況を変えることが可能です。
たとえば、まずは自分が何にストレスを感じているのか紙に書き出すなど、整理してみましょう。
自分の感情を文字に書き、目視することは、感情を落ち着かせる効果があります。
さらに、自分のストレスを理解し、それに対する自分の気持ちを知り、認めることが重要です。
これらのことを行うことで、より対処しやすくなります。
さらに身体の調子を整えることも重要です。
睡眠をしっかり取り、体を休めることでストレスを緩和できます。
また呼吸やストレッチも効果的です。
このように、ストレスに対処するために意識的に対処する、つまりストレスコーピングを行う力を身につけましょう。
その他にも具体的なコーピング方法をわかりやすく分類したものをご紹介します。
上記のような適切なコーピング方法を身につけることで、心身の健康を保ちながらストレスに立ち向かうことができます。
ただし、お酒やギャンブルなどでのストレス解消が日常的に続くと、かえって興奮を鎮めることとは真逆の結果になりかねませんので、注意が必要です。
■ さまざまな人生の転機はチャンスに変えられる!
さてここまで、組織における個人のセルフケアの対策、日常的なストレス要因への対処方法を見てきました。
ここからは、冒頭に紹介したセルフマネジメントの構成要素である「キャリアデザイン」について、少し触れたいと思います。
人生の中では、さまざまなライフイベントが起こります。
個人と組織の関係の中で言えば、入社、退社、異動、転勤、昇格、降格、転職、独立などでしょうか。
それだけでなく、個人のライフイベントとしては結婚、出産、病気そのほか、大小さまざまなライフイベントがあり、それぞれが人生の転機となり得ます。
ちなみに、米国の心理学者ナンシー・K・シュロスバーグはこのことを以下のように表現しています。
「人生においてキャリアの発達は、キャリアの転換の連続からなり、転機を乗り越える努力と工夫を通して形成されていく」
つまり個人の人生はさまざまな転機の連続で人生が形成されています。
時にその転機はストレスとなって、自身を襲うこともあるでしょうが、それを乗り越える努力や工夫でより良い人生が形成されるということです。
ストレスコントロールの観点で考えれば、まずこの「転機」を見極め、事前にストレスについて予期することで、より良い結果に導くことはできないでしょうか?
■ 人生の転機を見極めて、人生のストレスを上手に乗りこなす
シュロスバーグは2つの見極め方を挙げています。シュロスバーグは、予期していたことが起こっても起こらなくても、結果的に「変化」をもたらすと言っています。
こうしてみると、過去の出来事はすべてどこかに分類されませんか?
- 人生の役割の変化
- 人間関係の変化
- 日常生活の変化
- 自分に対する見方の変化
客観的に自分に何が起きたのか理解し、それによってどのような変化が生じたのか振り返ってみましょう。
これから起こりうるストレスを客観視し、ストレスコントロールを行うことで、これからの自分の人生を主体的乗りこなしましょう。
しかし、実際は「自分なんて…」「自分では力不足だ…」と自信が持てず、悲観的な思考に陥る人、自分の人生を主体的に管理するセルフマネジメント力が不足している人、自己理解が苦手と悩む人も少なくありません。
次でその例を解説していきましょう。
■ 自分に自信が持てない…インポスター症候群
「インポスター症候群」という言葉を聞いたことがありますか?
「インポスター症候群」は、仕事や業務で成功しているにもかかわらず、自分を過小評価して否定的に捉える心理傾向のことです。
男女関係なく誰でもなる可能性があり、特に能力の高い人ほど陥りやすい傾向がみられます。
自覚症状のない人も多いですが、成功や称賛を受けても「運がよかっただけ」、「周りのおかげ」などと考え、自分の実力を信じることができません。
競争が激しく、高いパフォーマンスが求められる現代の職場環境において、より発生しやすい心理傾向です。
「インポスター症候群」克服のためのステップ
- 自己認識の向上
- ポジティブなフィードバックの受入れ
- 現実的な目標設定
- サポートを求める
何よりも頑張った自分を認めることが大切です。
インポスター症候群は「一生懸命努力して頑張っているからこそ生まれる心の傾向」だと言えます。
自分はインポスター症候群に陥っているかもしれないと感じたら、まずは頑張った証を認めてあげてください。
そしてキャリアの転機などの「変化」を上手に利用し、付随する困難を乗り越えるためのセルフマネジメント力を身につけることです。
感情的な反応を抑え、冷静に状況を分析し、対処することが重要なのです。
以上、今回はセルフマネジメントの中でも、特にメンタルヘルスに焦点を絞り、現代社会に広く存在する主なストレス要因とその克服法であるストレスコントロールについて、キャリアの転機などにも触れながらお話してきました。
冒頭でお伝えした通り、セルフマネジメント力向上の目的は「自分の心と体、そして行動を管理し、より良い状態にもっていく」ことです。
つまりセルフマネジメント力が高まれば、「自分の能力をさらに引き出すためには何ができるか」を考えられるようになり、仕事のパフォーマンスや生活習慣のさらなる向上を見込めるようになります。
まさに「幸せな人生」が実現しますね。
キャリアプランニングでは、周囲で起こる困難やストレスを乗り越え、理想に向かって進んでいけるセルフマネジメント力を高めるプログラムをご用意しております。
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