新入社員はヒナ?~若者層の予習文化が新入社員研修のカギ!~

2020年02月12日

皆さんはご自身が新入社員だった時に受講した新入社員研修の内容を覚えておられますか?

4月の新入社員の入社まで残り2ヶ月を切りました。 それぞれの配属先、OJT担当(トレーナー)などの選定や入社時および入社後の定期的な研修などを計画される時期かと思います。
そこで今回のコラムでは、新入社員研修の組み立てに、ぜひ取り入れていただきたい考え方をご紹介いたします。

■インプリンティングとなる新入社員研修

さて突然ですが、インプリンティングという言葉をご存知ですか?
インプリンティングは「刻印づけ」「刷り込み」とも呼ばれ、心理学者ローレンツ,K.により提唱された、動物行動学における考え方です。
よく例えられるのが、「生まれたばかりの雛鳥が最初に見たものを親鳥と思う」という現象です。

■インプリンティング(刻印づけ・刷り込み)とは
生まれたばかりの個体が最初に見た動くものを親と認識するなど、一定の外部刺激が特定の行動パターンを誘導する現象。(生物学用語辞典より)
動物の生活史のある時期に、特定の物事がごく短時間で覚え込まれ、それが長時間持続する学習現象の一種。
刻印づけ、あるいは英語読みそのままインプリンティングとも呼ばれる。(百科事典より)

実は、新入社員が入社する時がこのインプリンティングの応用編と言われています

期待に胸を膨らませて新社会人としてのスタートを切ったころ。
社会人としてのマナーや基礎知識だけでなく、先輩方から教わった仕事の進め方や仕事に対する熱量など振り返ってみると、皆さんの「今」の仕事に対する姿勢にリンクすることがありませんか?

新入社員研修は「社会人としての礎」となります。

最初に「誰」から「なに」を「どのように」教わるのかで、仕事人としての基軸が築かれるといっても過言ではありません。
みなさんも振り返ってみると、思い当たることがあるのではないでしょうか?

実は新入社員時代の研修はそれほどに重要なのです。

■講師・OJTトレーナーは親鳥?

つまり、新入社員研修の講師やOJTトレーナーは親鳥ということになります。
特に、実際の業務を行いながら研修を積んでいくことのできるOJTの場合、そのインプリンティングの効果がより出やすいと考えられます。
OJTトレーナーである先輩社員の影響は非常に大きいのです。

では、OJTトレーナーを任命する場合、「こんな社員になってほしい」という願いを込めて、仕事で成果をあげている社員を抜擢すればよいのでしょうか?

■「できる」と「教える」は違う!OJTトレーナーの役割

実は、優秀な社員がトレーナーに向いているとは一概には言えません。

優秀な社員が陥ってしまうケースとして、「こうしたらいいと分かってしまうから、ついつい先回りして言ってしまった」「新入社員が分からないことが、分からない(自分はできてしまうから)」などがあります。

新入社員を育てるためには、時にはあたたかく見守り、新入社員と同じ目線に立って考えるなど、「教えるためのスキル」が必要なのです。

特に最近の新入社員は、「やってみて失敗して覚えることは非効率的」「経験する前に、準備して教えてほしい」「理由を教えてほしい」と思っている傾向が強く見られます。
つまり、「仕事の様子を見ながら覚えろ」「先輩の技術を見て盗め!」は通じません。
むしろそのような指導スタイルは、新入社員から見ると「指導放棄」ともとられかねません。

新入社員が「やりがいを感じる」場面を創造することなく、早期離職となるケースが多々あります。

つまり、親鳥となる先輩社員は「OJTトレーナー」として新入社員や後輩を「教えるスキル」を身につけていることが必要不可欠なのです。

そして、それ以外にも、OJTトレーナー自身が、新入社員らの価値観を理解することも重要です。

■新入社員とのすれ違いは若年層の「予習文化」定着にあった!

ここでOJT指導トレーナーと新入社員の間ですれ違う事例として、一番大きな違いについてご紹介したいと思います。

一般的に最近の学生や若者は「予習文化」だと言われています。
スマートフォンの普及から情報検索が当たり前になった昨今。

例えば、出かけるときには路線や時刻表を検索し、道程をシミュレーションしてから出発する。
また、食事に行くときには食べログなどそのお店の評判を検索するなど事前情報を得てから行動するということです。
行き当たりばったりの行動は好まないということの現れですね。

また、ゲームをする時には先に攻略本を読破してから取り掛かる方が多いようです。
これまでの感覚では、ゲームはやりながらひとつずつクリアしていくことで達成感を覚えるという楽しみ方でした。
しかし、現在では先に勝つ方法を知ってから、実際に本当に勝てるかどうか試すという楽しみ方に変化しているようです。
世代によって楽しみ方が違うということなのです。

このことを仕事に置き換えたとき、これまで通りの指導方法では新入社員の方で違和感を覚えてしまうことになります。

すれ違いを起こさないためには、仕事の全体像やスケジュールを事前に伝えること。
また事前に予習ができるようにマニュアルや指示書を準備しておくなど、その先が予測できる状況を互いに作っておく必要性があります。

■お互いの「あたりまえ」を知ることから始まる

  また、これまで学生として過ごしてきた新入社員は、「何かをしてもらうこと」があたりまえのように過ごしています。
様々なことを「期待する」側であり、待ちの姿勢でいても困りません。

しかし社会人になると、様々なことを「期待される側」に変わり、自ら行動し発信する「主体性」が求められるようになります。
このそれぞれの「あたりまえ」の違いに気が付かなければ、新入社員と教える側に様々なすれ違いが起こります。

いかがでしょうか?
それぞれが「あたりまえ」と思っている「自分の常識」の部分が、このように異なっていれば、意思疎通がすれ違ってしまうことも容易に想像できますよね。

■画一的な世界から多様性のある社会に踏み出す新入社員

また学生のうちは、どうしても同世代との交流が中心となります。
そのため、友人間、同世代間などで共通認識されることも多く、多くの言葉を口にしなくても意思の疎通が成り立ちます
しかし、社会人となるとそうはいきません。
ますますすれ違いが起きやすい状況に陥ってしまいます。

このような背景を知ったうえで、OJTトレーナーのほうから「親鳥」の気持ちで歩み寄り、声をかけることも必要です。
ただし、やみくもに甘やかせるという意味ではありません。
多様性のある社会に踏み出した新入社員に主体性をもった行動がとれるよう、促していくことが重要です。

このような背景を知らないままに、これまでと同じように現場に任せてOJT指導を進めていくと、新入社員が思うように育たなかったり、意思疎通ができず、最悪の場合、退職を迎えてしまうケースも考えられます。

以上のようなことをまとめると、以下のような3つの点をトレーナーが意識することが大切です。
これらが、早期育成と退職防止を図る上で重要なポイントになってきます。

・事前予習をできる環境をなるべく整え、発言のしやすい、質問のしやすい環境を整える
・社会人としての常識へ切り替わっていない可能性を理解し指導にあたる
・画一的な社会から多様な社会に出てきたばかりであることを理解し、指導にあたる

いかがでしょうか?

こうしてまとめてみると、 「新入社員の受け入れのためにこんなに気を使わないといけないのか?」 「普段の業務にプラスしてこんなに気を配れるか…」 と憂鬱な思いに陥った方もおられるかもしれません。

■新入社員のためだけでなく自分に活かす、会社に活きる

新入社員にとって新入社員時代に受ける様々な研修は、各人の社会人としての礎を築く重要な期間です。
そして、OJTトレーナーや先輩社員が求められる役割は非常に大きく、影響も大きなものであることがわかっていただけたかと思います。

しかし、これは新入社員のためだけではありません

このようなOJTトレーナーとしての指導スキルを先輩社員が身につけることは、新入社員が定着しやすい職場を創造します。
また、社員同士の意思疎通もスムーズになります。
さらに指導者としての先輩社員自身の自信にもつながります。

つまり組織に対してもプラスに働くことが明らかです。

よく、「子育てをすることで親も育つ」という言葉を耳にしますよね。
新入社員研修におけるインプリンティングの期間を大切にすることは、「ヒナが親鳥を親にする」つまり「新入社員が先輩社員を指導者にする」またとない機会ではないでしょうか?

ぜひこの機会に、改めて貴社の新入社員研修のあり方を見つめてみてはいかがでしょうか? 

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