人材開発コラム COLUMN
エンゲージメント向上は会社を強くする
2023年09月11日
最近、働き方の多様化、労働人口の減少など、組織づくりに対する考え方が見直されているなか、「エンゲージメント」という言葉をよく耳にするようになりましたね。
実はこの「エンゲージメント」は、重要な経営指標のひとつとして注目を集めています。
「エンゲージメント」の考え方は従業員と組織のパフォーマンスを高め、様々な課題を克服するための 大変重要な要素であり、多くの企業が直面している「人と組織の課題」を 解決する糸口として経営に取り入れられつつあります。
そこで今回のコラムでは、この「エンゲージメント」が組織の課題解決や業績向上にどのような影響があるのかを紐解いていきたいと思います。
■エンゲージメントとはいったい何なのか?
一般的に「エンゲージメント」とは、「従業員の一人ひとりが、企業・組織の掲げる戦略や目標を適切に理解し、自発的に自分の力を発揮する貢献意欲」と定義されています。
「自発的貢献意欲」とも表されます。
よって、組織と従業員が相互に信頼できる関係性を構築することを「エンゲージメントを高める」といいます。
わかりやすく言えば、従業員が企業や現在の仕事内容に価値を見出しており、組織や同僚を信頼して貢献したいと思っている状態だと言えます。
「エンゲージメント」は、従業員一人ひとりが主体的に取り組んでいる状態、つまり相互の対等な関係に基づくものです。
個人が自発的な貢献意欲を持って、対等な立場で組織と関わる「エンゲージメント」は、これからの個人と組織の在り方に合った概念とされています。
エンゲージメントには以下の2種類があります。
・熱意をもって仕事に取り組んでいる状態である「ワークエンゲージメント」
・下位者に対する思い入れや、帰属意識の源泉である「従業員エンゲージメント」
■「従業員満足度」「モチベーション」「ロイヤリティ」とは何が違うのか?
これまで、企業と従業員の関係性や意欲を表す言葉として「従業員満足度」「モチベーション」「ロイヤリティ」などの言葉がありましたが、「エンゲージメント」とは何が違うのでしょうか?
ここでそれぞれの違いを見ていきましょう。
従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)
従業員満足度とはESとも略され、従業員が企業や現在の仕事、職場の人間関係などに、どの程度満足しているかを示す指標。
あくまで「満足度」であり「自発的に貢献したいという態度・意欲・姿勢」とは異なる。
この満足度は組織が与えるものであり、これまでは企業の生産性向上や離職防止に役立つものとして最重要視されていた。
モチベーション
モチベーションとは、人が物事に取り組む意欲を引き出す「動機づけ」「やる気」のこと。
個人が感じるもの。
ロイヤリティ
組織に対する帰属意識。忠誠心など。
上下関係に紐づく。
ここでそれぞれの特徴を確認してみましょう。
もちろん、従業員満足度が高くなることで従業員の働く意欲(モチベーション)が上がり、生産性に良い影響を与える可能性はあります。
しかし、従業員満足度と組織の業績との関係は複雑で、必ずしも一対一の関連性があるわけではありません。
「会社に満足はしているが、自発的に貢献したいとまでは思わない。」「不満はないけれど、やる気に溢れているわけではない。」という心理状態は、容易に想像できるものではないでしょうか。
■なぜ「エンゲージメント」が支持されるのか?
では、なぜ今「エンゲージメント」が支持されるのでしょうか?
これには近年の労働人口の減少や働き方の多様化が背景となっています。
日本特有の、年功序列・終身雇用が当たり前であった時代が変化し、「人材の流動化」が進んだことが関係します。
離職者を防ぐ…つまり、「転職を踏みとどまらせること」へ経営者の関心が向くようになりました。
そのためには、従業員が働く環境に不満を抱かないだけでなく(従業員満足度を高めるだけでなく)、従業員が自発的に「この会社(組織)で働き続けたい」と思ってもらうことが不可欠です。
この視点にフォーカスがあたったことで「エンゲージメント」という考え方に注目が集まるようになりました。
■人的資本経営とエンゲージメント
予測が難しく変化が激しい昨今の状況を、「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(あいまい性)」という4つの単語の頭文字を使ってVUCA時代とも表現されますが、現代はまさにVUCAを体現したような時代です。
もはや前年踏襲が通用せず、誰もが「正解」を知らず、イノベーションが期待される中で、個人の自発的な貢献意欲が必然的に重要となってきています。
この時代背景も、「エンゲージメント」という考え方に注目が集まるようになった要因の一つです。
このVUCA時代においては労働者にとって、どんな環境や境遇におかれてもどこでも活躍するためのスキルや、強靭なレジリエンス力が必要です。
そして組織としては、それぞれの従業員が持つ力を最大限に引き出し、中長期的な企業の成長に繋げることが必須の時代です。
この「組織が人材を資本としてとらえ、人材の知識や技能などに投資する」という経営手法を「人的資本経営」といいます。
今後ますます重要性が高まってくる「人的資本経営」を効果的に実践するためにもエンゲージメントの取り組みは欠かせません。
エンゲージメントを高めることで、従業員は人的資本をより提供しようと考えるようになる効果が見込まれます。
■エンゲージメントを向上させる「心理的安全性」の重要性
エンゲージメント向上のメリットの代表的なものは以下とされます。
- エンゲージメント向上は企業の業績アップにつながる
- エンゲージメント向上は離職率を下げる
- エンゲージメント向上はイノベーションの創出をもたらす
上記を実現する最も重要な要素としては「心理的安全性」が挙げられます。
「心理的安全性」という言葉は、Google社が発表した「生産性が高い組織は心理的安全性が高い」という社内調査結果をきっかけとして、多くの企業が注目するようになりました。
心理的安全性が高い職場とは、相手の視線や思惑などを気にせずに、いつでも安心して自分の意見や希望を発言できる職場を表します。
そのような環境下では、良好なコミュニケーションをとることができるため有益な情報が共有されやすくなります。
するとメンバーのパフォーマンスが上がり、業績や組織の生産性が向上します。
結果、「会社にどれだけ貢献できるか」が指標のポイントとなるエンゲージメント向上につながるという図式になります。
不安や恥ずかしさを感じることなくリスクある行動をとることができるのです。
ここに「心理的安全性」と「エンゲージメント向上」が密接な関係性にあることが分かります。
心理的安全性を高める方法として、以下のようなものが挙げられます。
- 上司やリーダーが従業員の意見や提案を尊重し、フェアな評価を行う
- チームメンバー同士が互いに信頼し、サポートし合う
- 失敗や問題を責めるのではなく、学びや改善の機会と捉える
- 仕事の目標や期待値を明確にし、適切なフィードバックを与える
- 従業員の成長や発展に対して関心を持ち、必要な資源や支援を提供する
■これからの組織とエンゲージメント~「やりがい」や「意義」を感じられる組織づくり~
これまでの中で、エンゲージメント向上・生産性向上・心理的安全性の高さが強く関連づいており、ひいては企業の業績アップにつながることをお伝えしてきました。
さらに、これは職業の選択の場面においても大きなポイントとなります。
昨今、職業選択の場面において、安定や給与だけでなく、「やりがい」や「意義」が重要視されています。
実際、弊社の本年実施の「新入社員研修意識調査」の中で、自由記述において、会社に一番期待していることを聞いたところ、業務の内容や給与や福利厚生などの待遇面に関する回答件数を上回り「職場での良い人間関係」「相談できる上司がいる」「自分の意見が言いやすい」など職場の心理的安全性に関わる回答が多く見られました。また、仕事に対する「楽しさ」や「やりがい」、「自身がどう会社に貢献できるか」などの意見も見られました。
社員がやりがいを感じ、自らの意志で、責任をもって仕事に取り組める。
そのような状態を作り出せるかどうかが企業の未来を左右します。
これまで記してきたような、エンゲージメントの考え方を取り入れて、個々のパフォーマンスを高めることがこれからの企業経営においては必須であり、そのために何をすべきか、何ができるかの検討を始めることをお勧めします。
キャリアプランニングの公開セミナーでは、エンゲージメント向上に関心のある企業様に向け、「心理的安全性の必要性」をキーワードに、「エンゲージメント」の向上をテーマにした研修を予定しています。
組織運営に携わる管理職の方や、自ら行動できる自律的な社員を育成したい方など、 部下のエンゲージメントを向上させるポイントと、具体的な方法をお伝えいたします。
ぜひこの機会にご活用ください。