従業員が活躍できる環境整備を!職場・組織の風土改善に向けて

2024年09月13日

企業では人手不足、多様化への対応など多くの課題が山積みですが、特に近年注目されているのが組織風土の改善・変革です。
そこで今回のコラムでは、以下のようなテーマに区切りながら、職場の風土改善についてその必要性や直面する課題などについてフォーカスをあてていきます。

・コンプライアンス違反が増えているのは組織風土の劣化?
・組織風土は企業理念の実現にも影響する
・あなたの職場に潜むアンコンシャス・バイアス
・良質な風土づくりのために必要な考え方

そして本コラムを通じて、組織の風土改善に向けて実際に取り組むべきことなどをお伝えしてきたいと思います。

■ コンプライアンス違反が増えているのは組織風土の劣化?

近年、大企業の相次ぐ不祥事がメディアで取り沙汰されています。
昨年も自動車業界のトップメーカーや中古車販売大手企業による不正問題、大手芸能事務所による人権侵害など記憶に新しい方も多いと思います。
大企業以外でも、ハラスメントや個人情報の漏洩など、コンプライアンスに関わる話題が増え、身近な問題と感じる方も多いのではないでしょうか。

実際、上場企業などで重大な不正が発生した場合、調査委員会などを設置して事実解明を行うという実務が定着していますが、この報告件数は近年急速に増加傾向であることが以下のグラフからわかります。

上図によると2020年から2022年までの3年間では平均67件だった開示件数が、2023年には計97件にも上る調査報告書が開示され、各企業はガバナンス強化の取り組みをますます加速させています。
社会的信用を一瞬にして失ってしまうリスクを理解しながらも、なぜ企業による不祥事が年々増加しているのでしょうか。

不祥事を起こした企業の調査報告書には、「組織風土の改善・変革が喫緊の経営課題である」というような一文で締めくくられていることがあります。

つまり多くの企業で、コンプライアンス違反の原因に「組織風土」が関係していると結論づけているということがわかります。
コンプライアンス違反の件数が増えているということは、さまざまな企業でこの組織風土の劣化が起きているとも考えられるのではないでしょうか?

■ 組織風土は企業理念の実現にも大きく影響する

ここで重大なコンプライアンス違反を引き起こさないために、組織づくり・人づくりの観点から私たちが今取り組むべきことは何か考えてみたいと思います。

「組織風土」とは、組織の中で自然に形成され、時代を経ても継承される独自の価値観やルール、習慣のことを指し、従業員の思考や感情、行動に大きな影響を与えるものと言われています。
簡単に言うと、組織を覆う雰囲気や空気感であり、それ自体は目には見えないものです。
そして、この風土は従業員のモチベーションや、昨今注目を浴びている「エンゲージメント」にも密接な関係があります。

たとえば、企業理念やビジョンとして「社員が主体的にチャレンジできる会社」を掲げている企業があるとしましょう。
そこに以下のような考え方の社員が多かったらどうでしょう?

多くの従業員は黙って上司の言われた通りに仕事をこなしていれば良い、という思考に陥り、結果的に「指示待ち」でいることを選んでしまうでしょう。

そのような後ろ向きの空気感は次第に組織全体に蔓延し、そこで働く従業員一人ひとりの意欲や能力の発揮が妨げられ、最悪の場合、適切に報告されるべき不正等の良くない事柄さえも現場から経営層にまで伝わらない、という結果も招いてしまうのです。
また、このような組織風土の劣化は、決して一部の企業に限った話ではなく、どの法人・企業でも起こり得ることです。

「うちは多様な人材の採用に力を入れている」「全従業員に毎年コンプライアンス研修を実施している」「管理職や指導係がついて新人をしっかりサポートしている」という企業であっても、社員の入れ替わりなどにより、組織風土は絶えず変化し、時には劣化していく可能性があります。
組織風土そのものが一個人に与える影響を今一度念頭に置いて、人材育成と両軸で自組織の現状やあるべき姿について定期的に見つめなおす必要があります。

 

■ 劣化した組織風土の特徴

組織風土が劣化してくると次のような症状があらわれてくると言われています。

・上意下達(上からの一方的な指示や通達ばかり)
・下から上にものが言えない、言わない
・部門間の連携が悪く、無関心、あきらめ感の蔓延
・自責ではなく、他責思考
・ミドルが疲弊し、チャレンジしない、できない
・組織全体にやる気が感じられず、活力に乏しい

(参考:『「カルチャー」を経営のど真ん中に据える―「現場からの風土改革」で組織を再生させる処方箋』より)

思い当たることはありませんか?
組織全体でなくても、一部の部署がそんな雰囲気になっているというようなことはありませんか?

■ コミュニケーションが多い=心理的安全性の高い職場ではない

実際、不祥事を起こしやすい企業はコミュニケーションの自由度が低く、職場内の人間関係も希薄であることが分かっています。

一方で良い組織風土がある会社には、風通しが良い、主体的、挑戦的、協力的、開放的などの特徴があり、このような組織の元では、社員はやる気に満ち溢れ、自由に議論し新たなことにチャレンジしようとします。

弊社でも長年、多くのお客様から
「職場のコミュニケーションを改善したい」
「最近の若手社員とどうコミュニケーションを取っていいのか分からない…」
「もっと部下やメンバーの想いに寄り添った指導ができる管理職になってほしい」
など様々なお悩みやご相談を頂戴します。

コミュニケーションが一見活発に見える職場であったとしても、必ずしも心理的安全性の高い職場とは言えないのです。

ここでポイントとなるのは、職場における「人との関係性」「コミュニケーション」の在り方です。

■ 異なる意見でも忌憚なく伝えられる!安全な環境

「心理的安全性」とは、率直に発言したり、懸念や疑問、アイデアを話したりすることによる対人関係のリスクを、人々が安心して取れる状況のことを指します。
決して部下に対して感じよく振舞ったり、嫌われないように不自然に優しく接することでもありません。
つまり心理的安全性の高い職場とは、異なる意見を尊重し、建設的かつ前向きな衝突を恐れず、誰もが自由にものを言える職場ことです。

現代において、急速に変化する消費者のニーズや新しく登場する技術に適応するため、企業には柔軟かつ迅速に変化することが求められています。
予測不可能な時代を生き残るためには、従業員が対人関係の不安を抱えることなく、自由にアイデアを出し合い、情報を共有し、ミスを報告する風土が必要です。

実際に心理的安全性の高い職場では、従業員のエンゲージメントやパフォーマンス向上にもポジティブな相関関係があることが分かっています。
「心理的安全性」はそういった意味で、自組織が今後も生き残り、成長し続けるために避けては通れない考え方であり、「心理的安全性の高い職場」であることは組織風土の改善に重要な要素となっています。

■ あなたの職場に潜むアンコンシャス・バイアス

心理的安全性の高い職場環境、そして円滑なコミュニケーションが働く人々にとって重要なポイントであることは上に述べた通りです。
では、そんなコミュニケーションの中で、良かれと思って以下のような思考や発言をすることはありませんか?

  • 「次回も、女性らしい感性を活かした企画提案、期待していますよ!」
  • (Aさんは確かまだ小さい子どもの育児中だったはず…)「来期のプロジェクトリーダーはBさん(中堅男性社員)にお願いします」
  • 最近の若手社員はワークライフバランス重視と聞くし、すぐ辞めてしまう。何だか今年入社したCさんには残業は頼みにくいなぁ…いつも最後まで残って仕事をしているDさんなら引き受けてくれるかもしれない
  • 最近子どもが生まれたばかりの男性社員Eさんに「一家の大黒柱として、これからますます仕事を頑張らないとな!」と励ました

日頃のコミュニケーションがスムーズな職場であっても、職場環境が多様化する中、上記のような声かけや思いやりが、果たして正しいといえるでしょうか?
答えはNOです。

上記のようなことは、すべて無意識の思い込みや偏見、つまり「アンコンシャス・バイアス」と呼ばれ、育ってきた環境や経験から無意識に生じるものです。

■ 自身のバイアスを意識することが大切

アンコンシャス・バイアスは、誰もが潜在的に持っているものであり、それ自体が悪いものではありません。

現代は、性別・年齢・国籍・障がいの有無や就労形態など多様な属性の人々が、同じ職場で共に働く時代です。
その中で、自身が持つバイアスに無自覚であると、知らず知らずのうちに誰かを傷つけてしまうことにつながります。
そして、風通しの良いコミュニケーションが難しくなってしまいます。

自分が持っているバイアスを意識して、コミュニケーションをとることが非常に重要なのです。

「うちの会社は、そもそも男性社員が多いし、世代間のコミュニケーションギャップもそこまで問題になっていないから大丈夫」と思っていませんか?
それぞれ、立場も違えば、育った生活環境も違います。
全く同じ価値観を持った人ばかりの組織なんて本当にあり得るでしょうか?
多様な価値観が認められるようになった現代において、それこそが危険な思い込みかもしれません。

無意識の思い込みは、自分が意識することで初めて間違いを修正できたり、相手へ配慮することができるものです。
自社の組織風土を見直す上で、このような時代の変化に伴う課題を認識し従業員の知識をアップデートしていくことも、各企業の経営者や人事部門の方々にとって必要な取り組みだと考えます。

■ 良質な風土づくりのために必要な考え方

最後に、これから自社の組織風土改革に取り組みたいと考えられている方へ、風土改革を組織の長期的な成長に繋げるための考え方をご紹介します。

下の図に示した「成功循環モデル」は、組織が成果を上げ続けるために必要な要素とプロセスを明らかにしたものです。

組織として業績を上げたい、従業員のパフォーマンスを最大化させたいと考えた時に、まず「関係の質」を起点として、心理的に安全な場を作りながら、会社、従業員内のコミュニケーションを促進させることが何よりも重要であり、良いサイクルであるという概念です。

「関係の質」を起点として、関係性の質を高めた組織では、チームメンバーがより能動的にアイデアを出し、ほかのメンバーから出されたアイデアに対してもポジティブな意見を述べるようになり、チームとしての「思考の質」が高まります。
当然、ポジティブなアイディアからはポジティブな行動を促し、より良い「行動の質」が期待されます。
そしてその結果、目標を達成したり、高い成果や業績を得るなど、より良い結果「結果の質」に導かれます。
それがさらに「自分は周りの人に恵まれている」というチーム内の良好な関係性「関係の質」を生み出します。

まさに「関係の質」を起点とした好循環が生まれるのです。

逆に、「結果の質」から先に高めようとすると、どうでしょうか。

「結果の質」を起点として、無理に目先の成果や業績上の数字を上げようとすると、従業員に対するノルマやルールを課す等の強制力が働きます。
するとメンバーはストレスがかかって疲弊し、「関係の質」いわゆる人間関係が悪くなります。
すると結果以外のことに無関心になったり、他のメンバーの言動に対して批判的になるなど「思考の質」が低下してしまいます。
そして短期的な成果づくりに走り、メンバー間の協力も少なくなる「行動の質」が悪くなります。
すると、さらに個人のパフォーマンスは下がり、予算必達の圧力が強まるなど「結果の質」が低下していきます。
これでは、たとえ一時的に業績が上がる可能性はあっても、持続的な成長は見込めません。
このように、「結果の質」を起点とした循環モデルはまさに「負のスパイラル」「悪循環」となってしまいます。

組織の中で「結果」を求めるのであれば、、遠回りに見えてもまずは「関係」性を重視した施策を検討することをお勧めします。

■ 組織風土活性化のための取り組みのヒント

ここまでお伝えしてきたことで、自組織に当てはまることはありましたか?
実際に組織の中にいると自然と受け入れていることで気が付きにくいのが組織風土です。
今一度、良い点も悪い点も含め自組織の風土を見直し、すべての従業員が安心して活躍できる環境整備を目指しませんか?

  • 自社の理想と現実のギャップを把握する
  • 新たな行動指針の策定
  • 日々の習慣や行動がその企業の風土・文化をつくっていく、まずはトップから
  • 部門を超えた対話のワークショップを開催、お互いの価値観を理解する
  • 本音でものが言えるチームを醸成する、1on1で面談をする

長年かけて作られた風土を変えることは一朝一夕ではできません。
それでも、風土がそこで働く人の行動に大きく影響するという事実は変わりません。
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