人材開発コラム COLUMN
2024年新入社員の指導ポイント~2023年の新入社員の傾向から~
2024年02月19日
2024年度の新入社員の受け入れが間近となってきました。
長いコロナ禍を経て、ようやくコロナ禍前の日常が戻りつつあります。
2024年4月の新入社員の受け入れ準備にそろそろ拍車がかかる時期かと思いますが、いかがでしょうか?
今回のコラムでは、弊社が2023年4月に実施した新入社員研修を通じて、「指導した講師からの客観的な傾向」「受講した新入社員からの主観的な仕事観」を合わせてみることで、1年前の新入社員の傾向を紐解き、これから迎え入れる2024年度の新入社員の傾向を推察していきたいと思います。
■2023年度新入社員の傾向とは?~講師が感じた今年の新入社員の傾向~
2023年4月4日~7日の期間で開催した弊社主催の新入社員研修ですが「一般向け1日コース」「一般向け2日コース」「製造業向け1日コース」「製造業向け2日コース」で全21クラス、433人の新入社員が参加してくださいました。
いずれのセミナーもベテランの講師陣が複数クラスを受け持ち、座学だけではなく、グループワークやレポート作成など、受講者一人一人の様子を確認しながら研修を行いました。
そのうち、一般コースにご参加いただいた新入社員の傾向を、講師が「素直さ」「積極性」「規律性」「主体性」「協調性」「理解力・実践力」「関係構築力」の7つの観点で5点満点で評価しました。
同様の評価を行った2019年~2022年度の数値と2023年の研修中の様子を照らし合わせながら、「今年の新入社員の傾向」を分析しています。
上のグラフを見ると、これまでと比較して、「素直さ」「積極性」「規律性」「協調性」「理解力・実践力」という5つの項目で「関係構築力」以外は全て昨年を下回る結果となりました。
2022年度は2021年度のポイント数をすべて上回っていたことをふまえると、2023年度の調査結果はこの世代特有の理由があると考えられます。
■集団経験が乏しいまま社会人となった世代
これは2023年度の新入社員世代にとって、学生生活の大半がコロナ禍であったことが大きく関係していると考えられます。
実際、研修時の休憩時間には一人で自席で過ごす人が散見されました。
「ひとりで過ごす方が心地よい」といった「個」の世界に入り込む傾向が例年にも増しているように見受けられました。
またグループワークではコミュニケーションの取り方にとまどっていたり、積極的な人についていけず、居心地の悪さを感じている様子が垣間見えました。
2023年度の高校・短大・専門学校卒の新入社員にとっては、入学時から卒業まで学生時代のほとんどがマスク着用での生活。
大卒者にとっても、大学生活の7割以上がコロナ禍。
このため学生時代において、集団での生活や経験を積む機会が少ないまま、社会に出ることを余儀なくされた世代です。
その結果、上のグラフでも明らかなように、「協調性」「積極性」「規律性」など、集団生活において必要となるスキルを示す項目のポイントが大幅に下がっていることが見て取れます。
■自発的行動の強化が課題
また、講師陣からのコメントで「自ら考え、アクションを起こすことは苦手な印象が強い」ことが共通の所感として挙げられていました。
例年見られる傾向ではありましたが、より一層強くなっていることが示されています。
講師からの投げかけに対する反応が極めて薄く、具体的に方法を示さなければ行動を起こさないなど、極端に失敗を恐れる傾向が更に強まっています。
これらのことが「理解力・実践力」のポイント低下にも表れています。
指示されないと行動できない「受け身」姿勢の新入社員を「自ら考え、アクションを起こす」ように導くためには、単に行動を促しただけで身につくものではありません。
研修に留まらず、組織の中においても、新入社員世代の傾向を踏まえて、根気よく経験を積ませていく必要があります。
■指導のポイントはリアルタイムでの助言と指導
新入社員に行動変容を起こすには、良かった点はなるべくその場ですぐに褒め、感謝の気持ちを添えることです。
それは本人にとってとても大きな励みにつながります。
また、失敗したことに対しては、何が悪かったのかを具体的に示し、本人のミスを責めることはせず、次にそうならないようにするためにはどう改善できるか?未来志向で注意指導することが重要です。
近年の新入社員は自粛生活やリモート中心の学生生活を送ったことにより、通常であれば身につけられたであろう社会性や対人スキルに不安を感じているケースが多いのです。
ソーシャルディスタンスやステイホームの弊害とでも言うのでしょうか、そばに誰もいないことが多かった日々を過ごした学生も多かったはずです。
OJT指導者含め周囲はその環境や背景を考慮し、寄り添いながら見守り、必要に応じてリアルタイムで助言、指導することがとても大切です。
■相談しやすくて、人間関係が良いことがカギ
ここで同調査の中で、理想の上司に関する質問を行いました。
昨今の新入社員の傾向として「引っ張ってくれる上司」よりも「相談しやすく人間関係を重視する上司」が根強く支持されていることがわかります。
つまり新入社員との関係構築にあたっては「相談しやすい関係づくり」が必須です。
これは上司だけでなく、新入社員を指導するOJTトレーナーの方にも言えることであり、指導する際に意識することが重要です。
このような関係性を築くことで、スムーズに指導ができるだけでなく、組織に対するエンゲージメント向上にもつながります。
また、冒頭でご紹介しましたが、昨今の新入社員世代は「個の時間や世界」を大切にする傾向が強いことは確かです。
しかしながらコミュニケーションを取ること自体を嫌悪しているわけではありません。
ここでそれを裏付ける職場環境に関する調査結果をご紹介します。
「コミュニケーションが希薄で個人の自由が多い職場」よりも「コミュニケーションが密で一体感のある職場」を好む傾向が強く出ています。
新入社員に孤独感を感じさせず、先輩社員が一緒に歩んでいく姿勢を示すことが重要です。
メンター制度を取り入れ、新入社員それぞれの成長度合に合わせて、メンタル面のフォローを入れるなどをしていくことも有効です。
このような取り組みをおこなうことで、新入社員が相談しやすい関係構築につながるのではないでしょうか?
■OJT指導の大きな役割
さて、色々と2023年度の新入社員の傾向や指導方方法について触れてきましたが、より一層求められるのは、OJT指導力の向上とメンタルフォローの強化です。
まず、改めてOJT指導を導入するメリットとデメリットをご紹介します。
メリット | デメリット |
---|---|
|
|
こうしてみるとデメリットについては、事前にOJTに関する準備を行うことで、デメリットを減らすことができることがわかります。
つい業績優秀な社員に、後輩指導を任せがちですが、OJTトレーナーには新入社員の目線に立ち「寄り添う姿勢」と「教えるスキル」が必要なのです。
先輩社員が「教えるスキル」を身につけないまま新入社員を指導すると、伝えるべきことが伝わらない、つまり、新入社員が仕事の内容を十分に理解できていない状況に陥ります。
また、計画的な指導スケジュールを立てることで、生産性の低下を防ぎつつも、新入社員の指導が体系的に行えるようになります。
つまり新入社員の効果的な育成、指導のためには、OJTを現場任せにするのではなく、指導にあたる社員にトレーナーとしての指導方法やノウハウを身につける機会を設けることが必須です。
特に昨今、問題視されている新入社員の早期離職には、OJT指導時の関わり方はかなり影響が大きいと考えます。
ここで入社から3年目までの若年層の離職状況を見てみましょう。
上記で見る限り、入社3年目までの離職率は年度後の大きな変動は見られませんが、学歴に関わらず新卒1年目の離職率が一番高いことがわかります。
さらに離職者の離職理由に関する調査を見てみましょう。
上記で見る限り、すべての世代において離職理由の上位に「人間関係」を挙げる方が多いことが見て取れます。
また新入社員を含む若年層も同様の傾向が見られます。
特に新入社員にとっては、一番身近な存在であるOJTトレーナーやメンターが何でも相談できる相手となった場合、定着率が安定します。
しかしながらそういう関係性を構築できなかった場合、「人間関係」や「ハラスメント」を理由に離職するケースが増えてしまいます。
このような状況に陥らないためにも、OJTトレーナーの担う役割が大きいことを認識し、トレーナーとしてのあり方や新入社員とのかかわり方を学ぶことは不可欠です。
つまり、せっかく採用した新入社員を定着させ、早期戦力化を図るにはOJT指導者の育成が急務なのです。
■メンタルフォローの強化
次にメンタルフォローについてです。
前述のコロナ禍を孤独に過ごした傾向が強い世代にとって、将来への不安がとても大きい世代です。
また、対面で相談できる相手がいなかったことから、SNSの中に相談できる相手や目指す人物像がいる可能性が非常に高い世代でもあります。
また同年代が相談相手ということが多いのも特徴です。
このため、世代の違う社員に対して心を開いて相談をすることや対面して相談することに抵抗のある様子が散見されます。
このようなギャップを埋めるためには、メンターとなる人の心構え、相談された時の対応の仕方についてもしっかり学ぶ必要があります。
■新入社員の受け入れに向けて
さて、ここまで多くのことをお伝えしてきましたが、改めて御社の新入社員研修の受入れ体制は準備万端でしょうか?
近年、OJT指導担当者は入社3年目あたりから比較的若手社員が担当するケースが増えています。
その理由に、新入社員とのジェネレーションギャップが少なく、共感性が高いということがあります。
また自分が新入社員だった頃を振り返ることも容易な年齢のため、新入社員本人の不安や悩みに気づける可能性があります。
しかしながら、そうは言ってもOJT担当者自身が若手社員のため「仕事を教える」ことはできても「人を育てる」ということにはまだまだハードルが高く感じるものです。
新入社員の効果的な育成のためだけでなく、OJT指導担当者の不安を解決するためにも指導するスキルを身につける研修の提供が不可欠です。
■昨今の採用活動の傾向と新入社員研修の重要性
新入社員研修をご検討いただく上で、ここ最近よく耳にすることはやはり「採用難」であることです。
労働人口の減少は周知の事実ですが、その中でも特に高卒者の採用に関しては、特に困難を極めていることを肌で感じています。
実際、予定人数枠を埋めることができなかったいう企業様の声を多く聞きました。
一方で、大卒者の採用活動においては、内定率は前年よりも上昇している傾向がみられます。
しかしながら、学生側の動きとしては、内定獲得後も就職活動は継続している学生が多いのが実情です。
多くの企業が積極的に採用活動を行っている現状から、結果的に選考辞退や内定辞退が増えるという現象が起きています。
そのような状況から、年々企業の採用活動は長期化傾向となっています。
このため次年度の採用活動と並行しながら新入社員の受け入れ準備を行う人事の方の負担は非常に大きいものになっています。
このような中でも、4月に新入社員を受け入れる準備はしっかりしておきたいですね。
様々な活動を経てやっとご入社された新入社員の方々には「充実した学びの場の提供」をキャリアプランニングがお手伝いしたいと思います。
キャリアプランニングでは、新入社員が、それぞれの時期に適した内容を学び、段階的に成長ステップを踏めるようなプログラムをご用意しています。
新入社員の効果的な育成のためにも、指導にあたる先輩社員の育成のためにも、是非、弊社の公開セミナーをご活用ください!