人材開発コラム COLUMN
企業成長のカギは個々の役割理解から
2020年06月01日
昨今、新卒者の理想とする企業像の中に「上下関係のない企業」「アットホームな企業」という言葉を耳にします。
確かに、弊社実施の2019年度新入社員研修アンケートでも、「人間関係を重視する相談がしやすい上司」「コミュニケーションが密で一体感のある職場」を求める人が約9割という結果を示しました。
>アンケート結果を見る 「コラム:2019年の新入社員の傾向と指導ポイントについて」
しかし、当然ながらそれは中堅社員以上の社員が新入社員と同じスタンスでいることとは一致しません。
組織においては、一般社員から経営者までそれぞれの役職・階層に応じた「役割」が与えられています。
またそれらは「企業ごと」「業種ごと」「職種ごと」に求められる「役割」の中身は違いがあるでしょう。
今回のコラムでは、この「階層ごとに求められる役割」と「その理解の必要性」についてご紹介したいと思います。
■最初のステップは階層ごとの役割の明確化
まず最も重要なことは「階層ごとの役割」について、組織の中で定義づけができているか、またそのことが社員に伝わり理解されているかどうかです。
これがなくては次に進むことができません。
では、それぞれの階層の役割とはどのようなものでしょうか?
階層別の役割定義として一般的なものを、わかりやすく図で表してみました。
いかがでしょうか?
「経営者・上級管理職」「管理職」などは、その役割について学ぶ機会も多く、理解と自覚を持つことが可能でしょう。
しかしながら、そこまでに至るまでの「監督職・リーダー」「中堅社員」「一般・新入社員」の階層については、明確にできていない企業が多く、そのため従業員もその役割を理解できていないのが現状です。
つまり、最初にそれぞれの企業において上記のような図で、まずは階層ごとの役割を明確化することが最初のステップとなります。
■「役割」の不明確は「役割分担されていないプロジェクトチーム」そのもの
ここで、「階層ごとの役割が明確でない」ということがどうゆうことか、わかりやすくイメージしてみましょう。
例えば、とある1つのプロジェクトを複数人で担当し、成功させるというミッションが与えられたとします。
このプロジェクトを成功させるために一番にしていくことは何でしょうか。
目標の共有とともに大変重要なのがプロジェクト実現するための個々の役割分担とそれぞれの役割理解です。
プロジェクトのマネージャーやチームのリーダー、各メンバーなど適切な役割分担が重要です。
もし、役割分担・役割理解がされていないと、誰がいつまでに何をどこまで遂行するのか明確にすることはできません。
また、「誰かがやってくれているだろうという」思い込みから、期限が迫ったときに実は手つかずの業務があったなんてことも起きてしまうかもしれません。
役割分担・役割理解なしには、プロジェクトの成功はあり得ないのです。
役割分担が行われたうえで、個々がその役割を果たすことで、はじめてタスクが進み、効率的な進捗管理が実現できるのです。
このことは、企業活動に置き換えても同じことが言えるのではないでしょうか?
役割を明確化することで、社員は自らの責任と権限を理解し、個々のやるべきことや目標達成に向け、効率的に業務遂行に集中することができるのです。
■役割理解は企業と従業員にとってメリットしかない
では、役割を明確化した次のステップとして、その役割を理解をさせるためには、どのような手法があるでしょうか?
企業ごとに作成された階層別の役割図(求められる役割がわかるもの)を参考に、従業員それぞれが自身に置き換え、現在その役割が果たせているかどうか振り返ることから始めると良いでしょう。
企業におけるそれが準備されていない(古い)などの場合は、上記の図などを参考にして、一般的に言われている階層別における役割について知り、照らし合わせてみるのも良いかもしれません。
そうすることで、その役割を果たすために、今の自分にはどんな知識が足りないのか、今後得るべきスキルは何かなど見えてくるはずです。
自分の役割や、チームの目的・目標を理解しないままだと、何をどのように努力すれば良いのか分かりません。
また仮にそれぞれが努力をしていても、会社が求めている役割から逸脱していれば、それは時間や労力を投資したのに成果につながりません。
さらに、評価もされないという不幸なことになりかねません。
努力や成果が、比例するように評価されるためにも、自分の役割について理解させること、また企業がその機会を与えることは、双方にとって大変重要かつ必要不可欠なことなのです。
■役割理解の深化は人事制度とのリンクが必要不可欠
「個々が求められる役割を認識し、理解する」→「それに向けて成果を出す」→「評価される」→「さらに成果を出す」→…
このように、階層ごとに求められる役割の要件が、人事評価と連動していることは非常に重要です。
一般的に、人事制度における評価制度を導入している企業であれば、各等級に求める役割、またそれぞれに職務要件などがあり、これを基準に人事評価を行っていると思います。
しかし実際のところ、それぞれ個々の従業員が「具体的に内容を理解できており、納得できているか」というと、また別の問題です。
弊社が人事コンサルティングでご相談をいただくケースにおいても、社員に提示しているだけに終わっている場合が実に多いのです。
つまり評価される人事制度が確立しているのであれば、ここから必要なのは社員ひとりひとりへの役割理解の教育です。
個々が会社の目標を理解し、自分の目標設定に展開できるようにするためには、まずは「自分の役割って何だろう?」からスタートする必要があります。
そこから自社の人事制度、評価制度と連動して、さらに理解を進めることが効果的です。
また、キャリアビジョンを描かせるためにも評価制度とリンクさせた教育体系の整備も非常に重要な要素となってきます。
■企業成長を促す階層別研修の存在
では、それぞれの役割を理解させるためには何から手をつければよいのでしょうか?
弊社では、公開セミナーをはじめ、講師派遣においても長年研修サービスを提供しておりますが以下のようの切り口があります。
・職種別 (経理、人事・総務、営業など)
・テーマ別(業務改善・生産性向上、思考力・課題解決力、部下育成・チームづくりなど)
・階層別 (新人・若手・中堅・監督職|リーダー・管理職・上級管理職)
特に企業成長を促すのは、階層別の研修といっても過言ではありません。
階層別研修とは、その階層ごとに求められる役割と目標を認識し、その目標を達成するための知識とスキルを習得すること、そして成果につなげることができる人材育成を目的にした研修です。
階層別研修を通じて、社員ひとりひとりに求められる「役割」に対して、個々の理解や能力、スキルが向上します。
そしてその成果を、企業の中で発揮することは、企業の成長につながります。
また、企業としても、それらの能力を発揮する機会を創造することで企業の成長をさらに促進します。
■企業成長のカギは「中堅社員」「監督職・リーダー」研修
多くの企業では、新入社員は必ずと言ってよいほど研修を行います。
また管理職以上の方も、管理職研修の受講経験のある方が大半です。
そして、階層別の研修経験の少ない階層は「中堅社員」「監督職・リーダー」層なのです。
この層は、現場をなかなか離れることができないため、管理職になってから初めて研修に行くといったことも少なくありません。
そのため、同階層の他者と比較して自分自身の現状把握をする機会や役割について理解する場面が得られないのです。
これでは、自覚を持たせること、動機づけを行うことも難しい状況です。
最初にご紹介した階層別役割の図にもありますように、組織を表すピラミッドの中央部分を示しているのが、「中堅社員」「監督職・リーダー」層です。
つまり現場での原動力の中心となっているのは「中堅社員」「監督職・リーダー」層と言っても過言ではありません。
実は、ここ近年、これらの層においても研修実施にかける時間数や費用は、増加傾向にあります。
これは組織成長のカギとなるのが、階層別役割理解の中でも特にこの2階層だと考える企業が増えていることの現れです。
しかしながら、体系的に行われているケースは少なく、また全員に均等な機会があるかどうかは、企業によってまちまちなのです。
現場の一線で活躍している層だからこそ、早期に知識・スキルを習得することが本当は必要なのではないでしょうか?
また、社員としても学ぶ機会を渇望している可能性も少なくありません。
重要なのは、現場ですぐに使える知識・スキルの習得ができることです。
そして、その階層の本来あるべき姿について考える機会を与えることなのです。
自ら考え、行動する人材、そして次世代のリーダーを担う人材の育成をするためにも是非、早期に「中堅社員」「監督職・リーダー」層の底上げをしてはいかがでしょうか?