人材開発コラム COLUMN
コロナ禍に求められるメンタルトレーニング
2020年06月22日
コロナ禍が小康状態となり、感染予防に配慮しながら経済活動の再開が進められている今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか?
ようやく明るい兆しが見えつつある中ではありますが、心身の不調を訴える方が多くなっているとの声もきかれます。
これは組織としても個人としても深刻な状況です。
今回のコラムでは、このような未曽有の状況だからこそ、今取り組みたいメンタルトレーニングについてをお伝えしたいと思います。
■コロナ患者数は減少しても心身の不調を訴える人は増加傾向
3月以降、特に全国に緊急事態宣言発令の際には、ほとんどの方が「自粛」「ステイホーム」などの言葉通り、極力外出を控え、自宅にこもる生活を強いられていたかと思います。
弊社でも一部テレワークを実施し、感染リスクを回避する処置をとりました。
しかし、そのような状況下でも医療や介護職の方々のほか、業種によっては「ステイホーム」することができない方もおられたと思います。
全国的に感染者数が増加する中での勤務は、まさに感染リスクと背中合わせの状態が続きました。
そして現在。
6月に入り徐々に状況が落ち着いてきたとはいえ、未だワクチンや特効薬が見つかっておらず、都市部を中心に感染者数の報告がない日はない毎日です。
完全に安心できる環境とは言えません。
第2波の襲来も懸念されています。
このような不安定な状況が始まって約4か月。
特にここ最近では、置かれた環境は違っても、共通して心身の不調を訴える人が増加しています。
実際、検索エンジングーグルが提供する、検索トレンドを示すグーグルトレンドでも、「ストレス」「メンタルヘルス」「うつ」などキーワード検索がこの3か月で微増しているのがわかります。
さらにこの検索トレンドを詳しく見てみると、「ストレス」というキーワードと一緒に検索されているキーワードとして「コロナ」「微熱」「息苦しさ」「帯状疱疹」「腹痛」「頭痛」などが併用されています。
コロナ禍でのストレスが、体に異変をきたしていると想像できます。
そこで、漠然と「コロナ禍での不調」と一括りにするのではなく、その原因となることを紐解いてみましょう。
筆者は、この不調の原因には3つのことがあると考えます。
■コロナ禍での不調の原因【1】急激な生活様式の変化
まず一番大きな要因と考えられるのは、新型コロナウイルス感染拡大に伴い「新しい生活様式」への変化が急激に必要となったことです。
ほんの数か月の間に生活そのものが激変してしまいました。
企業では通勤方法の変化、働き方のスタイル、職場でのコミュニケーションの方法など、感染予防対策のために変えることを余儀なくされました。
特に自粛期間中は多くの企業が改革に踏み切り、「テレワーク」「リモートワーク」と言った言葉が当たり前のように飛び交うようになり、時差出勤、執務室の分散など、社会生活や働き方、職場の環境そのものが激変したのです。
当初は、「在宅ワークだと自宅だから感染の心配がなく安心」「自宅だと通勤時間がかからないから楽」などポジティブな面だけが取り上げられていました。
しかし結果、実際にそういった働き方を取り入れてみると、多くの人が「決して楽ではない」と感じるようになったのです。
自宅で仕事に集中できる環境の整備や、トラブル発生時の対応など、多くの方が慣れない中で在宅ワークならではの悩みを抱えることになったのではないでしょうか。
また、これまで以上に、家族と過ごす時間が増え、お互いの状況に応じた協力体制が必要となっています。
思うように外出ができない中、心身ともに家族間での負担が増加したことは想像に難くありません。
■コロナ禍での不調の原因【2】コミュニケーション方法の変化
前述の新しい生活様式に付随して一番大きく変わったのがコミュニケーション方法です。
会社では、対面で行われてきた会議が「画面越し」となり、WEBシステムの活用が急激に進められました。
学校や塾などでも「オンライン」授業が普及し、コンサートや芸能イベントまで「オンライン」で参加できるものが増えてきました。「オンライン飲み会」「オンラインお見合い」「オンライン同窓会」…と様々なシーンで、画面を通してのコミュニケーションが急速に普及しました。
これまで職場や学校に行き、気軽に友人に会い、そこでは顔を合わせてコミュニケーションを取るのが普通の日常だったわけでした。
対面でのコミュニケーションがストレスになる方もいらっしゃるかもしれませんが、話したいことがなくても、顔を合わせれば言葉を交わす。
そんな積み重ねが小さなストレス発散になっていたことも事実です。
ところが、ある日を境に、電話やメール、画面越しでの対話に切り替えなくてはならなくなったことで、ストレスが蓄積してしまう状況に陥った方も多いのではないでしょうか?
また、慣れない新しいコミュニケーション方法に気疲れをした方も多いのではないしょうか?
■コロナ禍での不調の原因【3】先が見えないことへの不安
そしてここれからも続くと思われる一番大きな原因が「見えない敵と戦わなくてはならない状況」です。
不安と恐怖を感じないわけにはいきません。
人間は、「予測できないこと」「終わりが見えないこと」への不安にストレスを感じると言われています。
まさに今の状況はストレスフルな状態なのです。
また、仕事量の激減により、将来や生活への不安を感じている方も多いと思います。
そんな不安な気持ちを持ったまま「心の内を話せる友達や家族とも思うように会えない」「趣味や娯楽もまだ我慢が必要」という状況が続くと、なかなか気持ちを前向きに持てなくなるものです。
6月からは順次自粛規制が解除され、県をまたぐ移動なども可能となっていますが、実際には観光地の宿泊予約は例年の2~3割程度との情報もあり、未だ多くの方が感染リスクを警戒して、自主的な自粛生活を続けていることがうかがえます。
いつになったら以前のような状況が戻ってくるのか…心の休まるときが無い状態が続いているわけです。
このような状況に、心も体も追いつけない人がいてもおかしくはないでしょう。
このように、不調の原因として考えられるものを3つにまとめてみました。
みなさんも思い当たることがありましたか?
■「この人は大丈夫」「私は大丈夫」と安易に決めつけないで
さて、そんな中、人によっては新しい生活様式を早くも受け入れて、今の状況を楽しみに変えている方もいることでしょう。
しかし、無理は禁物なのです。
こんなときだからこそ、自分と向き合い、心の声を無視しないで「今自分はどう感じているのか」冷静に内観する時間が必要なのです。
「ステイホーム」の間に十分考える時間はあったとおっしゃる方もいると思います。
しかし、コロナ禍以前の状態にはすぐに戻ることはできず、またこうして変化したままこれが常態化していくことを受け入れるにはやはり時間はかかるのです。
自分は大丈夫と安易に決めつけていると、実はどこかで無理をしていることに気が付かないで、突然体調不良となるケースも見受けられます。
体調に違和感を感じた時は、その痛みや違和感だけにフォーカスするのではなく、自分の心の声に問いかけてみることも重要です。
そして、企業としても「この人は大丈夫」と安易に決めつけることは非常に危険です。
特にこの時期は、メンタルヘルストレーニングを取り入れるなど、組織としても従業員の心身の健康をバックアップすることをお勧めします。
■メンタルヘルスケアの第一歩は「自分の思考のクセを知ること」
ではメンタルヘルストレーニングの第一歩として、何をしたらよいでしょうか?
今回のような未知の感染症拡大など、自分ではコントールできない出来事に対しても、人間は自分の悩みとして捉えがちです。
重要なのは、変えられないものに悩むよりも変えられるところに目を向けることなのです。
そのためにはどうしたら良いのでしょうか。
人間は誰しも「自分の思考のクセ」というものがあります。
一般的にネガティブ思考の方は、否定的な方向から考えてしまい、最悪のことばかり想定してしまいます。
危機管理の面ではネガティブな面に目を向ける思考も重要となりますが、常にその思考だと心は疲弊してしまいます。
一方で、ストレスに強い方の思考は、コントロールできることに目を向けて、合理的に時間と労力を注ぎます。
コントロールできないことに悩みんだり、不安に過ごしたりはしません。
そして、逆境に強い方の思考は、ピンチをチャンスに変えて物事を捉えます。
このような思考は、「生まれ持った性格」と思われがちですが、実は「思考のクセ」に起因するのです。
■「思考のクセ」はトレーニングで変えられる!
この「思考のクセ」はトレーニングをして努力すれば変えることが可能なのです。
そのためには自分のことを深く知ることから始めます。
しかし残念ながら、本を読むだけではなかなかトレーニングはできません。
ひとりで自分と向き合っているだけでは期待するような変化が現れず、場合によっては「やっぱり私はこんな人間なのだ」と自己否定感を深めて終わってしまいます。
そこでぜひおすすめしたいのが、その人に合ったメンタルトレーニングを受講することです。
参加型のセミナーであれば、知識としてインプットするだけでなく、ワークなどを通して実際の考え方や物事のとらえ方を共有することができます。
■組織としても「今」必要なメンタルヘルスケア
そして、メンタルヘルスケアは、個人のためになるだけでなく、組織のためにも非常に重要です。厚生労働省が発表している「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」の中でも、組織としても従業員のメンタルヘルスケアの重要性を説いています。さらに「セルフケア」、「ラインによるケア」、「事業場内産業保健スタッフ等によるケ ア」及び「事業場外資源によるケア」の「4つのケア」が継続的かつ計画的に行われることが重要と示されています。
(厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195_00002.html)
これまでは仕事においてのストレスを中心にセルフケアの重要と考えられていましたが、今回のコロナ禍の状況でさらに必要性は高まっていると感じます。
コロナ禍だからこそ、新しい生活様式にソフトランディングしていくためにも、参加型のメンタルヘルスケアトレーニングを活用されてはいかがでしょうか?