人材開発コラム COLUMN
なぜ今、人材育成が重要なのか?
2018年02月27日
■ニーズの変化と傾向
ここ数年、社員の人材育成を目的に、新入社員・中堅社員・管理職などの方を対象とした階層別の研修や、コミュニケーション、コンプライアンス、ロジカルシンキングなどのテーマ別研修のご相談をいただく機会が増えています。特に、組織運営の要となる管理職・次期管理職候補の方を対象とした研修のご相談が多い状況です。
その背景には、
・人材育成はOJTが中心で、研修はほとんど実施していなかったが、今後は研修も積極的に取り入れて人材育成に取り組んでいきたい
・人材要件や教育体系の見直しに伴い、研修制度も見直しを進めたい
・昇格要件の一つとして、階層に応じた研修の受講を追加したい
・近い将来の人員構成を考えて、次世代人材や管理職候補者を育成したい
など、様々なものがあります。
また、研修にかける時間(期間)も半日や1日のみの単発研修ではなく、半年から1年程度の時間をかけ、一つの目的に向かって実施する研修のご相談も珍しくありません。
次に、企業の従業員に対する教育訓練の全体市場動向に目を向けてみます。厚生労働省が毎年実施している「能力開発基本調査(平成28年度版)」の調査結果によれば、「企業が教育訓練(OFF-JT)に支出した費用の労働者一人当たりの平均金額」、「OFF-JTを実施した事業所数」、「OFF-JTを受けた社員数の増減割合」、「過去3年間(平成25年度~平成27年度)のOFF-JTに支出した費用の増減割合」のいずれの項目においても、前年度調査結果と比較して増加しており、従業員の人材開発を目的に教育訓練に力を入れていることがうかがえます。
※出典 「平成28年度 能力開発基本調査 厚生労働省」より抜粋(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000158458.html)
■重要度と緊急度
企業が従業員にかける教育訓練費は業績の向上や景気の動向に応じて変動するという傾向はありますが、業績や景気とは違う視点から分析をすると、なぜいま研修の相談が増えているのかその理由が見えてきます。
「経営資源はヒト、モノ、カネ、情報」、「モノ、カネ、情報を活かすのはヒト。よって、最も重要な経営資源は人的資源である」、「人材の成長なくして、組織の成長はない」ということは以前からも言われており、人材育成の重要性を既に認識され、実際に取り組んでこられた方も多くいらっしゃるはずです。
それではなぜ、急激に研修の相談が増えているのか…それは、緊急度が変化したためです。人材育成の緊急度が上がり、具体的に行動を起こすことが必要になった企業様が多いのだと捉えています。もちろん研修が唯一無二の手段ではありませんが、研修も含めて様々な手法で人材育成に取り組んでいる企業が増えているように感じます。
それでは、なぜ緊急度があがったのでしょうか…その大きな要因の1つが「外部環境の変化」です。
■外部環境変化への対応
皆さまもご認識されている通り、私たち組織を取り巻く環境は急速に変化をしています。「少子高齢化と労働人口の減少」、「採用環境の急激な変化」、「働き手の価値観の多様化」、「雇用形態、雇用条件の多様化」、「働き方改革」、「IT技術の進化に伴うビジネスモデルの変化」、「グローバル化」など、あげるときりがありません。こうした外部環境の変化は私たちではコントロールできない動きであり、内部環境にも大きな影響を与える要因となっています。そしてその変化は止まることなく、スピードはますます加速し、組織運営やマネジメントを今以上に困難なものにしていくと予測されます。
2016年に厚生労働省が発表した「第10次職業能力開発基本計画」においても、
「人口減少社会、グローバル化の進展、AI、ビッグデータ等を背景として、ビジネネス環境・就業環境が変化する中、人々が能力を高め、その能力を存分に発揮できる全員参加の社会と人材の最配置の同時実現を行うこと」や、今後の方向性として、「生産性向上に向けた人材育成の強化」、「全員参加の社会の実現加速」に向けた職業能力底上げの推進ということが掲げられています。
国としても、環境変化の中で人材育成への取り組みを強化していく必要があると考えているのです。
※出典 「第10次職業能力開発基本計画 厚生労働省」より抜粋(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000122803.html)
めまぐるしく変化する環境下では、今までと同じ考えや行動をとっていてはいずれその変化に対応できなくなり、衰退していってしまう…これは過去の歴史の事実からも明らかです。環境変化に対応し、組織も個人も変化していくことが一層に求められます。
■これからの人材育成
これからの組織においては、「指示された事だけを遂行する」、「過去の経験のみをよりどころとし、新しいことにチャレンジをしない」、「今までのやり方に対し、疑問も改善思考も持たず単なる作業的な処理にとどまる」、「意見に耳を傾けず、自分の考え、価値観のみでの組織運営をおこなう」といった人材より、
●自ら考え、行動する
●過去の経験を活かしながら、積極的に新しい事にチャレンジする
●今までのやり方に対し、改善案を提言し自らも実行する。
●多様な価値観に理解を示す、様々な意見を取り入れながら組織運営をおこなう
こうした人材の重要性と必要性がより増してきていると思います。ゴーイング・コンサーン(継続企業)の実現のためには、人材育成は十分条件ではありませんが、必要条件であることは間違いありません。
一方、人材育成に取り組んだからといって、必ずしもすぐに成果として現れるわけではありません。「人材育成には時間がかかる」と言ったことは実際にもよく耳にすることですが、その取り組みを止めてしまったら状況が好転することはありません。
簡単にあきらめることなく、OJTやOFF-JTを効果的に組み合わせて育成対象者へ成長の機会を提供し、計画的かつ継続的に取り組んで行くことは忘れてはいけないことだと思います。
経営理念に基づいた方針と戦略。その実現に向けての組織づくりと組織運営。その原動力の一つである人的資源。人材の採用、開発、定着といった課題に対し、私たちの提供するサービスが皆さまの一助となれるように、そして同じ環境に身を置いている私たちも環境変化に対応していけるように、より一層真摯に取り組んでまいります。
※研修の実施に向けては、別コラム「効果的な研修企画のポイント」をご覧ください。
(文責:人材開発コラム編集部)