~企業の在り方を考えるvol.1~「幸福学」からこれからの企業組織の在り方を考える

2019年08月26日

■幸福度が高い従業員は生産性が高い?!

企業を経営したこともない、大きな組織をマネジメントしたこともない筆者ですが、一人の従業員として、また、仕事柄さまざまな企業様の人材育成などに携わらせていただく身として「これからの企業の在り方ってなんだろう…」とを考えることがあります。

そんな風に考えているときに、私が出会った書籍に紹介されていたフレーズは、ハッとさせられるものでした。
「幸福度の高い従業員は幸福度の低い従業員に比べて、創造性は3倍、生産性は1.31倍、売上は1.37倍高い」

これは、慶応義塾大学大学院の前野隆司教授が書かれた書籍の中の言葉ですが、お聞きになったことはあるでしょうか?
「幸福」と「生産性」については国内外の様々な期間で研究が進められているそうで、そのデータを分かりやすく表現された一文です。

昨今、「働き方改革」という言葉とともに、業務の効率化が求められる中、この数字をみると、ぐっと興味をひかれませんか?

■「幸福学」を考えれば企業の在り方が見えてくる

これをきっかけに、私は「社員の幸福度」と「企業の在り方」について興味を持ち始めました。
そこから「幸福学」と「企業」について考えるに至ったわけですが、実は「幸福学」と初めに聞いて、私は「少し胡散臭い」「宗教っぽい」「そもそも従業員全員を幸せになんて非現実的」そんな風に思っていました。
同じような印象をもたれた方もおられるのではないでしょうか?

しかし、様々な幸福学に関わる文献を読み進める中で、「従業員が幸せを感じる因子が企業内にあれば従業員は幸せになれるのではないか」「そしてそれが本当に経営者や企業組織が目指したい組織の在り方なのではないか」と考えるに至りました。

私がこれまで、様々な企業様の人材育成のお手伝いをしてきた中で感じてきたことを、この理論が補完してくれた気がしました。

本日このコラムでご紹介したいのは、「”従業員の幸せ”を本気で考えた結果、経営がうまくいく、企業業績がのびる、組織マネジメントがうまくいく」
そんなありそうでなかった最新の理論です。
今日は、前野隆司氏の著書を参考に、企業の在り方を幸福学の視点から紐解いていきたいと思います。​

■「働き方改革」=「働く時間の削減」ではナイ

厚生労働省が示す「働き方改革」の主旨としてこのように紹介されています。

 働く方々が、それぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を総合的に推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保等のための措置を講じます。 

出典:厚生労働省「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~」(https://www.mhlw.go.jp/content/000474499.pdf) より一部抜粋

様々な捉え方ができるこの言葉ですが、多くの方が「働く時間の削減を実現し、ワークライフバランスを実現することで、従業員が幸せになる」というようなストーリーをイメージしがちです。
そしてこれは、「長時間働くことが従業員にとって”不幸である”」という認識に基づいた考えの表れだと感じます。

本当にそうでしょうか?

ご自身の仕事の状況を振り返ってみると「長時間労働=良くない・不幸」「短時間労働=良い・幸せ」と単純な方程式ではくくれないと感じませんか?
例えば、難しい仕事に取り組んで、みんなで成功を掴んだ…たとえ時間外労働となっても、大きな喜びを感じませんか?

■幸福度が高いってどうゆうこと?

冒頭ご紹介した「幸福度の高い従業員は幸福度の低い従業員に比べて、創造性は3倍、生産性は1.31倍、売上は1.37倍高い」という研究結果ですが、ここで示す「幸福度が高い」とは、決して「仕事だけ」もしくは「プライベートだけ」の充実だけを指しているものではありません。
どちらも含めて「自分が幸福」と感じている人のことです。

では、ここで示す「幸福」とはなんでしょうか?
当然ながら、幸せの姿は個人によって多種多様です。

つまり「幸福度が高い」と一言で言っても、そのおかれている状況は千差万別なのです。
このコラムでも、今読んでくださっている方それぞれの解釈・感じ方の自由があるように、「幸せ」にも人によってさまざまです。

しかし、「幸せの姿」は多様でも、「幸せに至るメカニズム」は共通であるというのが、次に紹介したい前野氏の理論なのです。
のメカニズムを知り、企業の中で実現できれば、「従業員の幸せ」を目指せるかもしれません。

■そもそも「幸せ」って何?

では、そもそも、幸せの定義とはなんでしょうか?

前野氏が紹介している幸せの定義が非常に分かりやすかったため抜粋・要約して紹介させていただきます。

幸せの定義には、古代ギリシャ・ローマの時代から知られる2つの考え方があります。
「ヘドニズム」と「ユーダモイズム」で、日本語ではそれぞれ快楽主義、幸福主義と訳されます。

「ヘドニズム:快楽主義」とは、例えばおしいものを食べて満ち足りた気分に浸るような、刹那的な快楽や喜びの繰り返しを幸せだと感じる価値観です。
そして「ユーダモイズム:幸福主義」は、自らの来し方を顧みて「私が人生中で行なってきたことには意味があったなぁ」としみじみ感じ入るような、人生全般にわたっての幸せを追及すべきという価値観を指します。

この2つの概念の違いは、幸せを感じる“タイムスパン”の長短にあることがわかると思います。

いわゆる、英語のhappyやhappinessのように「嬉しい」「楽しい」といった一時的・短期スパンの幸福と、身体的、精神的、社会的に良好で満たされ、健やかな状態の持続であるwell-beingのような長期スパンの幸福です。

そして、「意義のある幸せ」は短期的な心の動きにとらわれず、例えば「ここ10年は順調である」というような、ロングスパンにわたる心の状態を表す、いわゆる幸福感が長続きする長期スパンの幸せ、well-beingが「幸せ」に相当する学術用語として主に用いられています。

参考)「次世代日本型組織が世界を変える 幸福学×経営学」内外出版社

いかがですか?

幸せについて改めて定義づけしてみると、なるほど確かに「1回だけの刹那的な喜び」=「人生の喜び・人生の幸せ」と結びつきにくいということにはうなずけます。
しかしながら毎日の「小さな喜び」が「継続」したり「積み重なったり」することは「人生の喜び・人生の幸せ」に結びつくというのも、これまたそれぞれの経験から理解できるのではないでしょうか。
そして、その短期的な喜びも、長期的な喜びも、人の数だけ多様であり、形が違うことも分かります。

■「幸せ」を導く4つの要因

それだけ「幸せ」に対する感じ方や価値観が多様であれば、画一的に「従業員の幸福度を上げる」のは難しいのでは?
そんな考えに陥るかもしれません。

しかしながら、ここに「従業員の幸せ」を導くために非常に分かりやすいポイントが紹介されています。

同著で紹介している前野氏の調査では実は人々は「幸せ」と感じる事象は様々であっても、「幸せ」と感じる要因は4つに分類されることがわかりました。
つまり人間の脳が幸せと感じる対象や環境は多様であっても、人間の脳が幸せと感じる共通の基本メカニズムは同じという持論を唱えています。

これを「幸せの4つの因子」と名付け、この4因子を満たすことで長期スパンの幸福が得られると伝えています。

その4つの因子とは、

「やってみよう!」因子

自己実現と成長の因子
夢や目標、やりがいを持ち、それを実現させようと自ら成長しようとすること
「ありがとう!」因子 つながりと感謝の因子
他者を喜ばせたり支援したりすることで、人とのつながりを感じること
「なんとかなる!」因子 前向きと楽観の因子
常に楽観的で、自己肯定感が高い状態でいること
「ありのままに!」因子 独立と自分らしさの因子
周りや他人と比べず、自分らしくあるがままでいられること

参考)「次世代日本型組織が世界を変える 幸福学×経営学」内外出版社

前野氏は、この4つの因子を全て満たしている人は幸福度が高く、どれかが欠けていると幸福度は下がっていくと説いています。

どうでしょうか?
このような具体的な状況がイメージできる言葉で紹介されると、仕事の場面に置き換えることが想像できる気がしませんか

もちろん、4つの因子を完璧に全て満たすことは容易ではありません。
また、それぞれ個人の能力や性格により、構成する因子の重要度が変わってくることでしょう。
大切なのはバランスであり、高低はあったとしても、なるべくすべての因子を満たすことが高い幸福度に繋がっていきます。

■企業に求められる「幸せの4つの因子」の醸成

幸福について、著書を参考にみてきましたが、ここまでの内容を私なりにシンプルにまとめると、従業員の幸せに通ずるのは、組織における「やりがい」と「人間関係」といえるような気がします。

SDGsのコラムでもご紹介したように、持続可能な経営をますます求められる昨今、業績を上げ利益をだす、その結果企業をとりまくステークホルダーへ還元することは、経営のかじ取りにおいて常識となっています。
しかし、そのステークホルダーの1つである従業員はどれほど幸せでしょうか?
今の仕事にやりがいをもち、気持ちの良い人間関係の中で働けているでしょうか?

これまでのコラムの中でも、上司から部下への指導育成法、評価におけるフィードバック、メンター制度の重要性などたくさんのことをお伝えして参りました。
その中で共通していることとして、従業員の主体性・多様性を尊重した関わり方・コミュニケーションをとることが大切であり、その結果が風通しのよい組織風土を生む、組織の発展に繋がるということです。
それは上で紹介した、「幸せの4つの因子」の醸成にも繋がるのではないでしょうか?

自分の価値観ややり方と違うから、新人だからとルールという名の元「やり方」や「やること」を押し付けていませんか?
それは、「やってみよう!」因子を奪っているかもしれません。

従来の風土になかった考え方や発言をする人の意見を排除したり、違うと決めつけていませんか?
それは、「ありのままに!」の因子を奪っているかもしれません。

個々の従業員が気持ちよく4つの因子をバランスよく満たしながら働ける企業であること、その結果が企業の業績の向上につながり、理念の実現に繋がる。
きれいごとに聞こえるかもしれませんが、誰しもが目指したい企業の在り方のはずです。
そしてそれを本気で目指す企業にこそ、本当の意味での「持続可能な企業」がまっているような気がします。

(参考文献:幸福学×経営学 次世代日本型組織が世界を変える 内外出版 2018年5月27日)

従業員の幸福度を上げるおススメの研修

前述の4つの因子を念頭に置きながら、個々の従業員に対して必要な研修への参加を進めてみるもの、スキルアップや業務の効率化だけでなく、従業員の幸福度アップにもつながるおススメの方法です。

自己実現と成長
■つながりと感謝の因子を満たすおススメの研修
■前向きと楽観の因子を満たすおススメの研修(部下育成の視点から)
独立と自分らしさの因子を満たすおススメの研修

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