人材開発コラム COLUMN
効果的な研修企画のポイント vol.3 ~研修で学んだことの行動定着化~
2019年04月09日
今回は、「研修で学んだことの行動定着化」に着眼し、研修効果を今よりも上げていくために、研修の<実施前、実施期間中、実施後>の3つのフェーズに分けて、改めて考えていきます。 それぞれの段階でどのような関わり方、仕組みにすれば人の行動や考え方が定着し、行動変容につなげることができるかについてお伝えします。
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研修が「やりっぱなし」になるのはなぜか?
研修の定義とは、「組織の掲げる目標のために、仕事現場を離れた場所で、メンバーの学習を組織化し、個人の行動変化・現場の変化に導くこと」です。
しかし、残念なことに多くの研修は「やりっぱなし」になっており、学ぶことはできていても、実際の職場で活用し、組織に良い影響をもたらすことができていないのが現状です。
では、なぜ研修がやりっぱなしになってしまうのでしょうか?
理由は3つあります。
理由1:研修に参加させる目的や動機づけが事前に行われていない。
そもそもなぜ、この研修を受講することになったのか、研修受講対象者が理解していないケースが多く見られます。目的を持たず参加しているため、何かを得て帰ろうという意識が持てないのです。
理由2:研修後に学んだことを実践する機会や実行する権限が与えられていない。
直接今の業務に関連性がないテーマや、学んだことをアウトプットする機会が無いため、記憶が定着しないのです。
理由3:研修実施に対して、職場の理解、協力がない。
そもそも研修があることを上司が把握していない、受講者が職場を離れる際に快く送り出していないなどが原因で、参加者のモチベーション低下につながっています。
つまり、研修を「やりっぱなし」にしないためには、
- 受講者への事前の参加目的の明示と動機づけ
- 研修参加について上司、職場の支援と理解
- 研修で学んだことを実践する機会の創造
現場と上司を巻き込む研修企画
まず、研修実施前の準備として、「効果的な研修企画のポイントVol.1」でも触れていますが、研修を企画する段階で現場と上司を巻き込むことはとても重要です。
いくら経営者や人材開発部門が最近のトレンドや良いと言われている研修プログラムを導入しても、現場のニーズとの間に乖離があれば、受講者にとっては、学んだことが実践しにくい環境や状況になってしまいます。
研修を企画する際には、是非現場や対象者の上司へのヒアリングを実施されることをお勧めします。
日頃接している上司だからこそ、対象者にどう変化して欲しいのか、生の声を聞くことができるからです。
また、上司向けに研修内容の普及と実施期間中の関わり方について、事前説明会を実施すると、より現場との温度差を無くすことができるでしょう。
そして、研修スタート前に、上司から受講対象者へ、研修で何を学んでほしいのか、受講後になってほしい状態などについて直接伝える面談の機会を設けるのも良いでしょう。
このように理解とサポートでしっかりと動機づけすることが研修後の行動定着に大きく影響することになります。
研修企画者は、現場の声と経営の掲げる目標(ゴール)達成を繋げるための結節点になる必要があるのです。
研修オブザーバーの活用法
次に、実施期間中の取り組みとして、研修企画者や人材開発部門がオブザーバーとして研修に関わることは一般的なことですが、会社全体として研修の位置づけを理解していただくために、対象者の上司はもちろんのこと、経営者や幹部の方にも間接的に研修を受講していただくことをお勧めしています。
そのメリットは非常に大きいものです。
メリット1:研修と業務は一貫性があることを示すことができる。
メリット2:「共通言語」が生まれ、研修とOJTをリンクさせることができる。
メリット3:会社や経営者からの期待が受講者に伝わり、より真剣な受講態度につながる。
メリット4:研修に対する理解度が高まり、理解者を増やすことで、その後の育成計画に反映させることができる。
メリット5:講師に任せっぱなしではなく、場合によっては途中の軌道修正の要請ができる。
また、上司がオブザーバーに入ることで、研修内容を理解把握できるため、対象者が研修期間中に取り組む課題について適切な助言ができるようになります。
実施期間中も上司と面談の機会を設けるなど、より対象者との接点を高めていくことも研修内容の定着には効果的です。
ただし、オブザーバーとして、対象者を委縮させるような言動、研修の目的、意図と違うフィードバックなど、混乱を招くようなことがないようくれぐれも配慮が必要です。
研修を人事評価と連動させる
さて、これまで研修実施前の準備、研修実施期間中の取り組みについて触れてきましたが、いよいよ重要な研修実施後の段階に入っていきます。
研修の中には、単発のものもあれば、複数回シリーズにして実施する場合もあります。
ここでは、ひとつのテーマに沿って、複数回実施した場合についてお話します。
研修実施期間中には、各回の終わりに講師から課題が出題され、次回の研修までに取り組むような仕掛けがよく使われます。
最終回においては、今後の「行動計画表」や「アクションプラン」の作成など、一連の研修の総仕上げという位置づけで取り組むことが多いでしょう。
しかし、ここでよく起きる問題は、立てたはずの「行動計画表」や「アクションプラン」が実行されないままに終わっていることが多いということです。
なぜ、実行に移されないのでしょうか?
それは、
【1】高すぎる目標の設定
【2】立てた目標が人事評価と連動しないため、優先度が低い
主にこういった理由が挙げられます。
【1】については、実現可能なものになっているかどうか、上司とすり合わせをする必要があります。
抽象的な表現になっていないか、分かりやすく数値化されているか、具体的な期限やゴール設定ができているかなどがポイントになるでしょう。
また、【2】については、研修で立てた目標が評価対象であれば当事者意識を持てますが、そうでない場合は「やってもやらなくても良い」という判断になってしまうからです。
冒頭でもお伝えしたとおり、研修とは「組織の掲げた目標の達成」のために行われるべきなのです。
目標管理制度を導入している企業においては、是非、期首の目標設定の中に研修と連動した目標を盛り込んでいただくことをお勧めします。
また、現場の上司と対象者とのやり取りが実際に予定通り行われるよう、研修企画者や事務局からリマインドを発信していただくことも重要な役目です。
人材開発、研修企画の責任の範囲
「研修効果に影響を与える因子」としてアメリカのR.ブリンカーホフは以下のことを提唱しています。
研修受講者の学習に向かう姿勢は、事前の動機づけによるものであり、また学んだ後の復習・実践においては、研修そのものよりもウェイトが高いことが分かります。
研修を企画し、実施した後「この研修は役に立たなかった」「受けさせたけど、何も変わらない」「費用が無駄になった」と言われてしまうことは、研修企画者にとっても、我々のような研修プログラム提供者にとっても一番悲しいことです。
これまで述べてきたように、研修は実施することが目的ではなく、最終的には学んだことを「アウトプットする機会」を創造することです。
そういう意味では、研修実施前から後まで責任の範囲が広がるとも言えるのです。
このように研修の<実施前、実施期間中、実施後>とそれぞれのフェーズで、研修企画のポイントをお伝えしてきました。
まずは1つから参考にしていただき、組織活性化につなげてほしいと思います。
(文責:人材開発コラム編集部)
参考文献
- 研修開発入門-会社で「教える」、競争優位を「つくる」 中原 淳 著 ダイヤモンド社(2014年3月6日)
- 研修開発入門-研修転移の理論と実践 中原淳 島村公俊 鈴木英智佳 関根雅泰 共著 ダイヤモンド社(2018年7月18日)
- 人材育成担当者のための絶対に行動定着させる技術 永谷研一 著 Pro Future(2015年8月31日)
- ATSD米国人材開発機構 R.ブリンカーホフ 研修成果に影響を与える因子【4:2:4】の法則



